荒原(読み)コウゲン(その他表記)desert

翻訳|desert

デジタル大辞泉 「荒原」の意味・読み・例文・類語

こう‐げん〔クワウ‐〕【荒原】

荒れ果てた野原荒野
植物群系の一。気候条件などが厳しく、特定植物がまばらにしか生育できない所。乾荒原砂漠)・寒地荒原(ツンドラなど)・海岸荒原砂丘)などに分けられる。
[類語]荒野あれの荒野こうや原野枯れ野荒野あらの痩せ地荒れ地火山灰地

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精選版 日本国語大辞典 「荒原」の意味・読み・例文・類語

こう‐げんクヮウ‥【荒原】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 荒れ果てた野原。荒野。
    1. [初出の実例]「荒原古今之骨、東岱先後之魂」(出典:本朝文粋(1060頃)一三・為空也上人供養金字大般若経願文〈三善道統〉)
    2. 「市井を距ること凡そ四里許にして、一つの荒原(コウゲン)あり」(出典:花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉一)
    3. [その他の文献]〔晁補之‐呉松道中詩〕
  3. 草本植物がまばらに生えているような、被度の低い植物群落の総称。砂漠やツンドラなどの荒地にみられ、生育する植物の種類も一般に少ない。乾荒原、寒地荒原、海岸荒原、転移荒原、岩質荒原、硫気荒原に分けられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「荒原」の意味・わかりやすい解説

荒原 (こうげん)
desert

過度の乾燥・低温など環境条件が植物の生育に不適なため,植物被覆が連続せず荒れ果てた土地。植生相観は優占種の生活形や植物体密度などによって決まるが,植生を相観に基づいて分類した時の単位が群系であり,荒原というのはいくつかの群系をまとめた総称(群系族)の一つで,森林や草原同列のものである。砂漠・高山・極地方を中心に地球上の陸地面積の約3分の1を占める。よく用いられるリューベルE.Rübelの群系分類では,荒原は乾燥・寒冷・海岸・移動・岩上・岩隙(がんげき)の各荒原に細分されている。荒原には荒原特有の植物が生育し,温帯砂漠ではキク科・アカザ科などの木質化した茎をもつ草本的な半低木が多く,熱帯・亜熱帯砂漠ではサボテンなどの多肉植物や落葉性で枝にとげをもつとげ低木が多い。両者ともに乾燥度が高くなると,ごくまれに降る雨の後の短い期間に発芽から結実までを終える短命草本ephemeral plantが出現する。寒帯荒原や高山荒原では岩礫(がんれき)地が多く,地衣類や蘚苔せんたい)類以外ではロゼット植物rosette plantや半球形の団塊植物cushion plantなどの地表性の岩隙植物が多い。
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普及版 字通 「荒原」の読み・字形・画数・意味

【荒原】こうげん

荒野。

字通「荒」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の荒原の言及

【砂漠】より

…乾燥地域と同じ意味に使用されることもあるが,一般的には乾燥地域のうち,より乾燥した部分に使用されている。英語desertはラテン語のdesero(見捨てる)に由来するもので〈見捨てられた土地〉という意。その範囲は現在,最も広く引用されているメグズP.Meigsの乾燥地域分布図のうち,極乾燥地域と乾燥地域(狭義の)に相当する。…

【相観】より

…世界的にみれば,気候が変われば相観は変わる。東アジアのような湿潤地域での熱帯から寒帯へという温度変化に伴っては,巨大高木を含めて3層の高木層をもち優占種がない常緑の熱帯多雨林,巨大高木層のなくなる亜熱帯多雨林,優占種が目だつ暖温帯常緑広葉樹林(照葉樹林),冷温帯落葉(夏緑)広葉樹林,亜寒帯針葉樹林,寒帯荒原(ツンドラ)へと移行する。熱帯での湿潤から乾燥へという変化に伴っては,熱帯多雨林,乾季に上層木が落葉する半常緑熱帯多雨林,全体が落葉する熱帯季節(雨緑)林,樹木を混じえた熱帯草原(サバンナ),とげ低木の生育する半砂漠,短命草本が出現する砂漠へと移行する。…

※「荒原」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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