(読み)アラ

デジタル大辞泉 「荒」の意味・読み・例文・類語

あら【荒/粗】

[名]
魚などの肉のよい部分を除いた残りの骨や頭。「ブリの―」
米のぬか。また、もみ。
人の言動や作品のよくないところ。おちど。欠点。「―を探す」
[接頭]名詞に付く。
細かでない、すきまがある、の意を表す。「―垣」「―塗り」
自然のままの、の意を表す。「―がね」
おおよその、簡略な、の意を表す。「―すじ」
[類語]デメリット欠点ぼろ短所難点欠陥くせ遜色弱点盲点瑕疵かし瑕瑾かきん弱み泣き所負い目引け目付け目ウイークポイントハンディキャップ

こう【荒】[漢字項目]

常用漢字] [音]コウ(クヮウ)(呉)(漢) [訓]あらい あれる あらす すさむ
〈コウ〉
土地があれはてる。「荒地荒廃荒野荒涼
作物が実らないこと。不作ききん。「荒年救荒凶荒備荒
あらっぽい。あらあらしい。「荒天
すさむ。「荒淫こういん
でたらめ。「荒誕荒唐
国のはて。「八荒
〈あら〉「荒海荒波手荒
[名のり]あら・ら
[難読]荒布あらめ荒磯ありそ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「荒」の意味・読み・例文・類語

あら【荒・粗】

  1. [ 1 ] 〘 造語要素 〙 主として名詞の上について、これと熟合する。
    1. 勢いのはげしいさまを表わす。
      1. (イ) 勇ましい。たけだけしい。また、乱暴な。粗暴な。「荒馬」「荒武者」など。
        1. [初出の実例]「荒魂。此をば阿邏瀰多摩(アラみたま)と云ふ」(出典:日本書紀(720)神功摂政前九月)
        2. 「荒三位(あらざんみ)道雅の君」(出典:大鏡(12C前)二)
      2. (ロ) 荒っぽい。激しい。「荒波」「荒海」「荒行」「荒療治」など。
        1. [初出の実例]「さ夜ふけて荒風(あらし)の吹けば立ち待てる我が衣手に降る雪は凍(こほ)り渡りぬ」(出典:万葉集(8C後)一三・三二八〇)
        2. 「為朝が申す様以ての外の荒儀なり。年の若きが致す所か」(出典:保元物語(1220頃か)上)
    2. 出来具合が精密でないさまをいう。
      1. (イ) 人手の加わっていない、自然のままの。「あらたま」「あらかね」など。
        1. [初出の実例]「草陰の阿努(あの)な行かむと墾(は)りし道阿努は行かずて阿良(アラ)草立ちぬ」(出典:万葉集(8C後)一四・三四四七)
        2. 「荒木を切て投出したり」(出典:浄瑠璃・源平布引滝(1749)二)
      2. (ロ) 十分に精練されていないさま。粗製の。雑な。細かでない。すきまの多い。「荒妙(あらたえ)」「荒炭」「荒垣」「荒薦(あらこも)」など。
      3. (ハ) ととのっていないさま。荒れはてたさま。
        1. [初出の実例]「板蓋宮の墟(アラところ)と為らむ兆なり」(出典:日本書紀(720)皇極四年正月(岩崎本訓))
      4. (ニ) おおよその。大体の。あらまし。「あら削り」「あら筋」「あらづもり」「あら塗り」「あら彫り」など。
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙 よい部分を大体取ってしまった残りをいう。
    1. 米などのぬか。もみぬか。あらぬか。
      1. [初出の実例]「糠 ヌカ アラ」(出典:観智院本名義抄(1241))
    2. 魚鳥獣などの肉を料理に使って、あとに残った肉のついている骨や頭や臓物。粗骨(あらぼね)
      1. [初出の実例]「琴箱やまどろむ橋にかかるらん〈龍眠〉 麁(アラ)のすましを望む有明〈米仲〉」(出典:俳諧・江戸新八百韻(1756))
      2. 「鰯、鯖、鮪等の敗肉(アラ)は皆一所に掃溜めて」(出典:最暗黒之東京(1893)〈松原岩五郎〉二二)
    3. 粗製のもの。雑なもの。
      1. [初出の実例]「山田村御米五十六表之内、あら御座候米之由」(出典:梅津政景日記‐慶長一七年(1612)三月二九日)
    4. 欠点。おちど。特に人の小さな欠点。
      1. [初出の実例]「親類・知人にも折々は出合ふて、話をも聞、下のあらも是に依て知り」(出典:政談(1727頃)三)
      2. 「是迄に触れて来た女の非点(アラ)ばかりを捜して行った」(出典:黴(1911)〈徳田秋声〉五七)

荒の語誌

[ 一 ]は、動詞「あらく〔下二〕」「あらす〔四〕」「あらびる〔上一〕」「あらぶ〔上二〕」、形容詞「あらし」「あらけなし」などを派生し、「あらわ(は)」「あらあら」「あらまし」などをつくり、動詞と熟合して「あらだつ」などともなる。なお、上代では、「いそ(磯)」や「うみ(海)」と熟合する時は、「ありそ」「あるみ」の形となる。動詞の「ある(荒)〔下二〕」と同根の動詞「ある(生)」には、下二段活用で生まれる意、四段活用で産む意を表わすことがあり、それとも深い関係があろう。したがって、「あら(現)」、「あら(新)」は、ともに(イ)の意を含んで連続しており、「あらわる」「あらわす」などの語とも共通の要素があると考えられる。


あれ【荒】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「あれる(荒)」の連用形名詞化 )
  2. 土地、建物などがいたむこと。荒廃。また、荒地のこと。
    1. [初出の実例]「西田井事、是又皆荒にて、御下地に主もなく候間」(出典:東寺百合文書‐に・永享八年(1436)一一月一〇日・丹波大山荘一井谷百姓等申状)
  3. 勢いはげしく動きまわること。あばれること。
    1. [初出の実例]「のみに行(ゆく)居酒(ゐざけ)の荒(あれ)の一(さわぎ)〈乙州〉 古きばくちののこる鎌倉〈野径〉」(出典:俳諧・ひさご(1690))
    2. 「鼠の荒(ア)れにも耳そばだてつ」(出典:別れ霜(1892)〈樋口一葉〉一四)
  4. 天候がおだやかでないこと。あらし。暴風雨。
    1. [初出の実例]「早旦暴雨迅雷、実今日初午之荒也」(出典:蔭凉軒日録‐文明一九年(1487)二月一一日)
    2. 「おやおや、此の風雨(アレ)にまア、何処へお出ででしたい?」(出典:魔風恋風(1903)〈小杉天外〉後)
  5. 皮膚に脂肪が欠乏してきめのあらくなること。
    1. [初出の実例]「皮膚の荒れや弛み」(出典:故旧忘れ得べき(1935‐36)〈高見順〉八)
  6. 書画の幅物、巻物などの絹張りや紙面が汚れ損じていること。
  7. 試合中、勝敗の形勢の変化がはげしいこと。
  8. 歌舞伎で、荒れ場の演技。英雄豪傑や鬼神などが怒り荒れ狂う所作をいう。
    1. [初出の実例]「四ノ口の荒(アレ)の場がどうしてかうしてと」(出典:滑稽本・古朽木(1780)一)
  9. 相場などがはげしく不規則に変動すること。
    1. [初出の実例]「昨日の荒で痛手を受けた東京方の、追証の払へるのを待って」(出典:家族会議(1935)〈横光利一〉)

あらま&GIE599;し【荒】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙 ( 動詞「あれる(荒)」の形容詞化で、荒れているさまをいうか )
  2. 波や風などが荒々しい。激しい。
    1. [初出の実例]「川風のいとあらましきに、木の葉の散りかふ音、水のひびきなど」(出典:源氏物語(1001‐14頃)橋姫)
  3. 言動、態度などが荒々しい。乱暴だ。粗野だ。
    1. [初出の実例]「あらましき東男(あづまをとこ)の腰に物負へるあまた具して」(出典:源氏物語(1001‐14頃)宿木)
  4. 道などが、荒れ果てている。険しい。
    1. [初出の実例]「往来(ゆきき)のほどあらましき山道に侍れば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)宿木)

荒の派生語

あらまし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

あらび【荒】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「あらぶ(荒)」の連用形の名詞化 )
  2. 荒れること。乱暴すること。
    1. [初出の実例]「鹿ケ谷の屋敷も平氏のあらびに追払はれ」(出典:歌舞伎・上総綿小紋単地(1865)四幕)
  3. 俳諧で、あまり趣向を凝らさずに句を作ること。
    1. [初出の実例]「『さるみの』三吟は、ちとしづみたる俳諧にて、悪敷(あしく)いたし候はば、古びつき可申候まま、さらさらとあらび(〈傍書〉荒ビ)にておかしく可遊候」(出典:浪化宛去来書簡‐元祿七年(1694)五月一三日)

あらし【荒】

  1. 〘 名詞 〙 ( 接尾語的に用いて ) 乱暴をしたり、迷惑、損害などをかけること。また、その人。「道場荒らし」「総会荒らし」
    1. [初出の実例]「黒人ではお前さんの手に掛かる様な馬鹿が無くなったので、今度は素人(しろうと)荒らしと出直したの?」(出典:良人自白(1904‐06)〈木下尚江〉前)

こうクヮウ【荒】

  1. 〘 名詞 〙 荒れた土地。荒れた田野。また、辺境の地。
    1. [初出の実例]「十載難危天未厭、投荒尚得此身存」(出典:岷峨集(1313‐28頃)下・会昌茂宗)
    2. [その他の文献]〔陶潜‐帰園田居五首詩・其一〕

あらくれ‐&GIE599;し【荒】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙 荒々しい。粗暴である。
    1. [初出の実例]「御仁躰に似合ませぬ、荒(アラ)くれしい為され方」(出典:浄瑠璃今川本領猫魔館(1740)二)

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【不作】より

…ところが,常不・永不などは,作付けが困難であるため,棄地として長期間放置された田畠をいう。中世後期では,これを荒(あれ)・荒所(あれしよ)とも称した。また,常不,永不などの場合,おのずと名主職や百姓の保有権も消失し,いわゆる無主地となっていった。…

※「荒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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