荷留(読み)ニドメ

デジタル大辞泉 「荷留」の意味・読み・例文・類語

に‐どめ【荷留】

中世領主領内の港や関所で、そこを通過する物資移出入禁止・制限したこと。

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精選版 日本国語大辞典 「荷留」の意味・読み・例文・類語

に‐どめ【荷留】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 室町時代、座の特権を侵害するものに対する貨物没収の手段。座に加入した商人(座人・座衆)は本所から特定商品に対して専売権を賦与されていたが、それ以外の商人はこれに年貢銭を納入しなければならず、その特権を侵した場合は、座衆は本所または幕府裁決をあおいで商品没収の対抗措置をとった。
  3. 戦国大名などが領内の流通統制のため行なった禁輸物の統制政策。
    1. [初出の実例]「法度をおき、にとめ候時、これは無拠候、とをされべきと、たれも侘言すべからず」(出典結城氏新法度(1556)七六条)

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改訂新版 世界大百科事典 「荷留」の意味・わかりやすい解説

荷留 (にどめ)

初期には,特権的な座商人などの間で座の法や掟に違反した者の貨物を,他の者が関所や港で没収することをいった。しばしば,座商人どうしの争いとなり,座衆で解決しない場合は,荘園領主や幕府に訴えて,その決裁を仰いだ。しかし大名領国制が進展すると,領主が自領の商品流通の統制にのりだし,旧来の座衆がもっていた荷留権をうばって,物資の移出入を管理するようになった。おもに関所や港で監視し,港の場合は津留という。対象となる物資ごとに,米留とか塩留という場合もあり,木綿や皮,馬など,生活必需品のすべてにわたって統制されていた。戦国期には主として軍事的な必要性から荷留される場合が多かったが,近世幕藩体制下になると,領内の物価調整や産業保護のために行われる場合が多くなった。荷留によって商人間の自由交易は制限され,領主管理下の統制商業にとどめられていた。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「荷留」の解説

荷留
にどめ

津留とも。物資の移出入を制限・禁止すること。室町時代,座商人は特定商品の専売権など諸特権をもち,座以外の商人がそれを脅かす場合,荷を没収する慣行があり,本所・幕府も認めていた。戦国期には大名は領国存立のため,米・塩などの生活必需物資,皮革・馬などの軍需物資の他領への移出を制限・禁止した。江戸時代になると,各藩は藩領の自給自足体制・藩専売制の維持のため,特定商品とくに米・塩の移出入を制限・禁止した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「荷留」の意味・わかりやすい解説

荷留
にどめ

中世に領主が自領の港や関所において、そこを通過する物資の移動を禁止または制限したことをいう。また室町時代からは、一定の商品に対する専売権をもつ座に対し、その特権を侵したものに対して行う荷物没収のこともいった。座に加入している商人が、その営業の特権を侵害された場合、特権を認めている本所(ほんじょ)または幕府に訴えて、商品没収の対抗措置をとった。

[川名 登]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「荷留」の意味・わかりやすい解説

荷留
にどめ

封建領主が自領と他領間の物資移動を禁止,制限した一種の流通統制策。港,関所などで行われ,港で行われるものを津留という。対象となったのは米,塩,木綿,皮革,馬など。戦国時代には軍事的必要から行われたが,江戸時代には米価調節,産業保護など経済政策的意味が強かった。

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