津留(読み)ツドメ

デジタル大辞泉 「津留」の意味・読み・例文・類語

つ‐どめ【津留】

中世近世、領主が領内外における特定物資移出入禁止または制限したこと。港で行われたのでこの名がある。口止め

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「津留」の意味・読み・例文・類語

つ‐どめ【津留】

  1. 〘 名詞 〙 室町時代から江戸時代にかけて、封建領主が米穀その他の物資の他領との移出入を制限・停止したこと。多く、津(=港)で行なわれた。荷留(にどめ)。室町時代には、軍事的要求に基づく場合が多い。江戸時代になると、商品の移出入統制が、物価調節・自領内産業の保護等、経済的な理由による場合が多くなり、自領と他領を連絡する水陸交通の要路には口留番所などを置いて、人や物資の自由な領外移出入を取り締まった。
    1. [初出の実例]「武家諸法度〈略〉一私之関所、新法之津留、制禁之事」(出典:御触書寛保集成‐一・元和三年(1617)六月)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「津留」の意味・わかりやすい解説

津留 (つどめ)

近世において諸藩が,藩外との米穀などの物資の移出入を統制あるいは禁止した政策。1635年(寛永12)の〈武家諸法度〉に幕府は〈私関所,新法の津留,制禁の事〉という一条を定め,新規の津留を禁じたが,以後諸藩の津留政策がなくなったわけではない。津留の執行機関は藩領各地に設けられた口留番所(くちどめばんしよ)や沖ノ口番所で,湊における移出入の統制だけでなく,藩境目など陸上交通の要所においても取り締まったのである。

 津留の具体的目的は時期・場所によって多少の違いがみられ,近世初期の津留は藩の必要物資が移出入によって不足することを防止し,藩経済の一体化を図るものであった。1644年(正保1)盛岡藩が出した留物令(津留令)の対象物は,蠟,漆,綿布,麻糸,鍬,馬,牛,紅花,紫,塩,熊皮,手形なしの男女などとなっている。藩産出の農産物・手工業品などを藩内に確保する必要があり,その一部に藩が専売制実施していたからである。無手形男女を対象としたのは,欠落(かけおち)・逃散ちようさん)の防止にあった。藩内外の流通機構が整備されてくると,全面的な移出入禁止では対応できなくなり,許可状の手形をもつ物資の移出入を認め,手形なしの物資の移出入を禁止するようになった。62年(寛文2)仙台藩は他領出禁制品を増しているが,禁制は絶対的なものでなく,それぞれの品目によって,藩主の印判あるいは奉行・出入司・御算用奉行・御割奉行の手形をもつ品目の移出入を認めるようにした。津留は物価調節策の一手段としても実施された。1672年福岡藩は博多湊からの生魚・酒の津出しを禁ずるとともに,他浦からの生魚の迎買(むかえがい)をも禁じている。米は高値であるのでこれまで入津を認めてきたが,新米が出回ったことを理由に米・大豆の移入を禁じた。74年(延宝2)出羽久保田(現,秋田市)の惣町中は米高値解決のため沖ノ口での津留を藩に要求し実現させている。商品流通の展開とともに津留はしだいに弱体化したのである。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「津留」の意味・わかりやすい解説

津留
つどめ

中世から近世にかけて行われた封建領主による物資流通統制の一手段。とくに諸藩における例が多く、藩領境の道路や港などに「津口(つぐち)番所」「口留(くちどめ)番所」などを設けて、特定物資の移出入を禁止し、あるいは制限した。津留を受ける物資を「留物」といったが、その品目は諸藩により時の事情によってさまざまで、凶作・飢饉(ききん)などには自領の米穀類の他領移出を禁止し、また年貢納入完了までは米穀の移出を禁止したところもある。近世中期以後、諸藩で国産物の専売制が敷かれると、その品の移出は禁止され、また領内の物価統制、特産物保護などのために、特定の物資の移出入に課税し制限した場合もあった。しかし幕府は、全国的な商品流通を推進する立場から、新規の津留を禁止している。

[川名 登]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

山川 日本史小辞典 改訂新版 「津留」の解説

津留
つどめ

荷留とも。中世~近世に物資の移出入を制限・禁止した領主政策。津(港)で行われることが多いためこの名があり,対象物により米留・塩留などがあった。戦国大名はとくに軍事目的から物資の移出入に注意を払い,1568年(永禄11)今川・後北条両氏が手を組んで武田氏への塩の供給を遮断した措置は,戦略的な経済封鎖として有名。藩政確立期には,多くの藩が産物を特定して領外移出を禁じ,自給自足体制の維持をはかった。商品流通が全国的に展開した江戸中期以降は,とくに米価調節を目的とした政策が繰り返されたが,実施をめぐりしばしば領民とのトラブルが発生。津留の際,港や藩境の番所では,物資のほか船舶や人の往来も監視した。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「津留」の解説

津留
つどめ

封建領主が領内の港で物資の移出入を禁止すること
戦国時代には軍事上の必要性や津料徴収を目的として実施。江戸時代には藩の物価調節・年貢米確保・専売制・産業保護・飢饉時の食料確保などを目的として実施された。米の場合,米留といい,ほかに塩・皮・木綿などもあった。1869年廃止。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「津留」の意味・わかりやすい解説

津留
つどめ

荷留」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の津留の言及

【荷留】より

…しかし大名領国制が進展すると,領主が自領の商品流通の統制にのりだし,旧来の座衆がもっていた荷留権をうばって,物資の移出入を管理するようになった。おもに関所や港で監視し,港の場合は津留という。対象となる物資ごとに,米留とか塩留という場合もあり,木綿や皮,馬など,生活必需品のすべてにわたって統制されていた。…

※「津留」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android