日本大百科全書(ニッポニカ) 「落語の用語」の意味・わかりやすい解説
落語の用語
らくごのようご
いたつき 〔板付〕
幕を開けたとき、落語家がすでに高座にあがっていること。一席終わるとそのままで幕が下りる。
おおぎり 〔大切・大喜利〕
寄席の1日の興行の最後の出し物。大ぜいで遊戯的に演ずることが多い。
がくやおち 〔楽屋落ち〕
お客にはあまり関係なく、仲間うちの者が聞いて笑いだすような咄(はなし)。
がくやちょう 〔楽屋帳〕
楽屋にある演題控え帳。前座が出演者の咄を聞きながら記入し、次の演者はこれを見て演題を重複しないように高座にあがる。「ネタ帳」ともいう。
かけあがり 〔駆け上がり〕
かけ持ちのときなどに急いで寄席に到着し、すぐ高座にあがって演じること。
かぜ 〔風〕
扇子のこと。
かみしも 〔上下〕
高座の上手(かみて)・下手(しもて)のこと。高座に向かって右が上、左が下。1人で演じる会話の基本となるもので、年配者が下手を向いて話しかけ、目下の者は上手を向いて話す。
かんばん 〔看板〕
よく知られ、人気のある落語家のこと。「一枚看板」「大(おお)看板」などという。
きっかけ
落語の進行中に音曲や鳴物(なりもの)などを入れたりする合図。
きりねた 〔切種〕
上方(かみがた)落語の真打(しんうち)咄。「大ネタ」「大きい咄」の意。
くいつき
中入り直後の第一席の出番。またその席を勤める芸人。
くすぐり
落語のなかで演者が用いるギャグ。笑わせる部分。
げそ
下足の略。寄席で下駄(げた)や草履(ぞうり)など、脱いだ履き物をいう。
こうざがえし 〔高座返し〕
出演者が交代するとき、前座が出てきて、座ぶとんをひっくり返し、前の演者の羽織や湯飲みをかたづけ、メクリ(演者の名を記した紙)をめくって、次の演者にかえたりすること。
さら
最初に高座にあがること。開口一番。
しんうち 〔真打〕
落語家の最高の資格。前座、二つ目を経て昇進し、「師匠」とよばれる。真打のなかでも大幹部のことを「大(おお)真打」「大看板」「一枚看板」などという。
ぜんざ 〔前座〕
落語家の格づけで、二つ目の下、最下位の称。真打の登場する前に高座にあがって演ずることを「前座を勤める」という。
でばやし 〔出囃子〕
落語家が高座へあがるときに演奏する曲。もともと上方のもので、東京へ移ったのは大正時代のことである。それまで東京では「しゃぎり」の太鼓であがった。
とり
主任。真打。最後に高座にあがる芸人。
とりねた
上方落語で真打用の大きい咄をいう。近年、東京でもいうようになった。
なかいり 〔中入り〕
休憩のこと。
にどあがり 〔二度上がり〕
前に高座にあがった芸人がもう一度あがること。次の出演者がこない場合に行う。
はめもの
上方落語で、咄の途中に入るお囃子(はやし)。お囃子入りの落語。
ひざがわり 〔膝替わり〕
寄席で真打のすぐ前に出演する芸人。いちおう、色物(の芸人)が原則のようになっている。
ふかい 〔深い〕
寄席の遅い出番。逆に早い出番は「あさい(浅い)」という。
ふたつめ 〔二つ目〕
落語家の格づけで、前座の一つ上の格の称。前座の次に高座にあがるところからいう。
ふら
芸人の天性の資質。
まくら 〔枕〕
落語の導入部。本題に関連する話の内容やサゲがわかりやすいように似たような小咄(こばなし)をしたり、咄のなかのむずかしいことばの注釈をしたりする。
やりもの 〔演り物〕
出し物、演目、演題。
わり 〔割〕
寄席の給金。一日の客の入りによって計算する日割の歩合制。