インドではアショカ王が建立した、ブッダガヤの欄楯(らんじゅん)にみられる蓮華文が最古で、アレクサンドロス大王の東征(前334~前323)によって、エジプトのロータスがギリシアを経て東漸したものと考えられる。その後インドではロータス(スイレン)から蓮華文へと変貌(へんぼう)し、写生的な表現の度を増していく。一方、後漢(ごかん)時代から西域(せいいき)を通じて、インド系とギリシア=西域系の蓮華文が中国に伝わり、以後中国の仏教美術に欠くことのできない模様となった。
仏教では蓮華が仏の座として、さらには仏のいます極楽浄土の象徴とみなされ、寺院の建築装飾、仏像彫刻、仏画、仏具など多岐にわたって、この模様が使用された。日本の蓮華文は仏教伝来とともに始まり、主として上記のような仏教関係の荘厳具(しょうごんぐ)の装飾模様として使用された。
こうした仏教における象徴としての蓮華文のほかに、中国では、周茂叔の『愛蓮説』に記されているように、ハスを花中の君子とみなし、さらには花が咲いたあとに実がなる普通の花とは違って、ハスは花と実が同時に生じるところから、貴子が早く生まれるようにとの祈願を託した吉祥(きちじょう)模様として、建築、家具、什器(じゅうき)、また装身具などの装飾に用いられた。
[村元雄]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
蓮の花を意匠化した文様。古代エジプトのロータス文に起源が求められる。とくに炎暑のインドでは涼しい水辺と水中に咲く蓮は理想の境地を象徴し,それが煩悩から解脱して涅槃(ねはん)の境地に至るのと合致するとして,仏教文化とともに発達した。紀元前2世紀のサーンチーのストゥーパの石製欄楯(らんじゅん)の装飾にすでに用いられている。日本には仏教とともに伝来し,飛鳥時代以降寺院の軒丸瓦,仏像の台座・光背,仏具などに広く表され,仏教の代表的な装飾文様となった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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