蔵鉤(読み)ゾウコウ

デジタル大辞泉 「蔵鉤」の意味・読み・例文・類語

ぞう‐こう〔ザウ‐〕【蔵×鉤】

古代中国から伝来した遊戯の一。二組みに分かれ、一方の組の者が握りこぶしを出し、その中の一人が物を握っているのを、他方の組の者が言い当てるもの。

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精選版 日本国語大辞典 「蔵鉤」の意味・読み・例文・類語

ぞう‐こうザウ‥【蔵鉤】

  1. 〘 名詞 〙 中国から伝来した遊戯の一つ。漢の武帝の寵妃の鉤弋(こうよく)夫人は、生まれてから手が握られたままであったが、武帝がこれを開かせて玉鉤を得たという「漢武故事」に見える故事から出たあそびで、二組に分かれ、一方の側の一人が鉤をかくして全員が握りこぶしを出し、鉤をかくしたこぶしを、他方の側の者が言い当てるもの。
    1. [初出の実例]「帝覧蔵鉤戯、左右相分、飛鳥遊附者不禁」(出典日本文徳天皇実録‐仁寿三年(853)二月乙丑)
    2. 「蔵鈎(ゾウコウ)又蔵とも云。酒飲賭にする戯なり」(出典:随筆・撈海一得(1771)下)

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改訂新版 世界大百科事典 「蔵鉤」の意味・わかりやすい解説

蔵鉤 (なんこ)

手に物を握り,その数を当て合う遊び。中国の《荆楚歳時記》に〈蔵彄(ぞうく)〉の戯と記されていることから,南北朝(5~6世紀)にはすでに行われていたもので,漢の昭帝の母の鉤弋(くよく)夫人の両手が拳状になったままだったのを武帝が開いて治したという故事に由来するというが,これは彄と鉤の音が共通するために付会されたものであろう。初めは指輪を回してだれの手にあるかを当てる遊びだった。日本でも《文徳実録》には仁寿3年(853)に文徳天皇の前で蔵鉤が行われたとあり,《日本三代実録》には文徳天皇が宮人とともにこれを行ったと記述されている。蔵鉤の名称は《和名抄》にも出てくるが,和名はあてられていない。室町時代には〈なご〉と呼ばれていたことが荒木田守武の句にも見え,西鶴の《好色一代男》には〈よい年をして螺(ばい)まはし,扇引,なんこよびておのづと子共心になりて〉とあるように,江戸中期には子どもの世界に流布していた。遊び方もこのころには手に握った小石や豆の数を当てるものになっていた。名称の由来を〈何個〉の意とする説や〈石なご〉の略とする説は,この遊び方にちなむものであろう。丁半を争う賭事としても行われた。明治期にはおはじきの遊びとして継承されたが,現在は見られない。
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百科事典マイペディア 「蔵鉤」の意味・わかりやすい解説

蔵鉤【なんこ】

互いに小石を掌中につかみ,その数を当て合う遊戯。中国から伝来したといわれる。《日本文徳天皇実録》や《日本三代実録》に天皇の前でこの遊戯を行った記事があり,のち僧院の稚児(ちご)の間で行われたという。室町時代以降一般に普及して子どもの遊戯となった。明治期にお弾きとして継承されたが,現在では見られない。

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