手に物を握り,その数を当て合う遊び。中国の《荆楚歳時記》に〈蔵彄(ぞうく)〉の戯と記されていることから,南北朝(5~6世紀)にはすでに行われていたもので,漢の昭帝の母の鉤弋(くよく)夫人の両手が拳状になったままだったのを武帝が開いて治したという故事に由来するというが,これは彄と鉤の音が共通するために付会されたものであろう。初めは指輪を回してだれの手にあるかを当てる遊びだった。日本でも《文徳実録》には仁寿3年(853)に文徳天皇の前で蔵鉤が行われたとあり,《日本三代実録》には文徳天皇が宮人とともにこれを行ったと記述されている。蔵鉤の名称は《和名抄》にも出てくるが,和名はあてられていない。室町時代には〈なご〉と呼ばれていたことが荒木田守武の句にも見え,西鶴の《好色一代男》には〈よい年をして螺(ばい)まはし,扇引,なんこよびておのづと子共心になりて〉とあるように,江戸中期には子どもの世界に流布していた。遊び方もこのころには手に握った小石や豆の数を当てるものになっていた。名称の由来を〈何個〉の意とする説や〈石なご〉の略とする説は,この遊び方にちなむものであろう。丁半を争う賭事としても行われた。明治期にはおはじきの遊びとして継承されたが,現在は見られない。
執筆者:半澤 敏郎
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