病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版 の解説
薬を使用するときの注意点
薬が最大限に効果を発揮するためには、正しく選択された薬を正しく使用することが第一条件となりますが、同時に、医師・薬剤師と患者とのコミュニケーションの良し悪しも、治療効果に影響をもたらします。
自分から積極的に受診する人の場合は、医師・薬剤師などの医療者と患者との関係は比較的確立しやすく、治療も順調に進みやすいものです。ところが、家族や友人など周囲の人に勧められて受診をする人の場合は、治療意欲が薄く、わがままや甘えが出るなどして、治療がつまずくことが多いものです。たとえば、医師の指示に従わずに、薬を飲んだり飲まなかったりすれば、治療期間が長引いたり、慢性化の道をたどることにもなります。慢性化して治療が長期にわたると、それをすべて医療者の責任にしがちですが、そのような場合、自分のほうに誤りがなかったか、いちど考えてみてください。
受診の際には十分な説明を受け、納得したら医療者の指示に従う素直さと、自分で治そうとする意欲を持つことが大切です。
医療や薬に関する疑問点は、たくさん出てくると思います。わからないことは、医師・薬剤師に積極的に相談しましょう。かってな自己判断は、かえって治療を長引かせるだけです。医療機関は多忙なことが多く、相談が要領をえないと、きちんと対応できないケースもあります。あらかじめ相談・質問する事項を簡潔に要領よくメモにまとめておくと、時間もかからず、適切な回答や指示が受けられるでしょう。
薬の効果を最大限に引き出すため、また副作用などの事故を未然に防ぐためにも、服用にあたっては次のことを守ってください。
●薬を処方してもらう前に(あらかじめ医師に伝える事項)
①これまで、薬を使用したときにアレルギー反応をおこしたことがある。
薬だけでなく、食物、健康食品、サプリメント、化粧品などでおこしたアレルギー反応であっても必ず伝えてください。副作用を最低限におさえるためにも、たいへん重要です。
②持病がある。
薬によっては、ある病気には高い効果があっても、別の病気ではかえって病状を悪化させてしまうものがあります。また、持病の有無を伝えておかないと、医師は適切な診断や薬の処方ができません。
③現在、妊娠中か、妊娠する可能性がある、または妊娠を希望している。
胎児に悪影響を与える薬があり、まだ安全かどうかの基準がはっきりしていない薬もあるからです。
④赤ちゃんを母乳で育てている。
薬のなかには、成分が母乳中に混じってしまい、それを飲む赤ちゃんに悪影響を与えるものもあるからです。
⑤使用中か、最近まで使用していた薬がある。
医師は、まったく薬を用いていないことを前提に診断・処方しますから、きちんと報告しておかないと、適切な診断や薬の処方ができません。現在使用している薬や、最近まで使用していた薬があれば持参し、医師に見せましょう。診断や治療をより確実にし、回復を早めるために役立ちます。
●薬をもらったら
①自分に処方された薬だけを飲む。
薬は患者の病気の種類、症状、体質、年齢、体重などの条件の違いにしたがって処方されています。また、同じ薬でもいろいろな使い方をします。
つまり、同じ病気であっても、人によって薬の処方は違い、また同じ薬であっても使用目的が違うことがあります。ですから、ほかの人に処方された薬を飲んだり、自分の薬をほかの人に与えたり、後日余った薬を飲むといったことは絶対にしないでください。
②薬は、指示通り、正しく使用する。
指示された時間、回数、期間などを正確に守って薬を飲むことは、病気の治療上もっとも重要な条件です。
いかにすぐれた薬でも、まちがった服用をしたり、服用し忘れたりすると、期待される治療効果が得られず、場合によっては病気を悪化させることにもなります。
処方してもらうときに、医師に自分の日常生活や仕事の形態をよく話し、無理のない服用法を相談しておくことも必要でしょう。
③薬は、指示された使用期限内に使う。
古くなった薬は廃棄して、使用しないでください。とくに、液剤(水剤)は変化をおこしやすく、効力の低下や有害物の発生もおこりうるので、注意してください。
④薬は、そのままの形で使う。
最近の薬には、1日1回服用するだけで十分な効果を発揮する、副作用を防止する、味や臭いによる飲みにくさをカバーする目的で加工をほどこされたものが少なくありません。これをつぶしたりカプセルから取り出したりすると、効果がなくなったり、副作用が生じたり、飲みにくかったりします。必ずそのままの形で使用してください。
⑤いちどに2回分以上の薬を飲まない。
薬を服用し忘れた場合、2回分をいっしょに飲まないでください。忘れたことに早く気づいたときは、その時点で飲んでもよいのですが、次回の時間に近い場合は次に1回分を服用し、飲み忘れた分は抜いてください。
⑥何種類もの薬を飲んでいる場合は、服用ごとに、薬を確認してから飲む。
長期間にわたって飲む薬の場合、薬の種類や服用量・服用時間をよく確認してください。また、前回までの飲み残しの薬の使用期限には注意し、使用期限が過ぎているものは廃棄するようにします。
⑦ようすがおかしいときは、医師や薬剤師に相談する。
現在服用している薬の効き方が悪かったり効きすぎたり、症状に変化を感じたときは、かってに服用を中止せずに、医師か薬剤師に相談してください。
また、適量以上に飲みすぎたり、併用薬をまちがえたりして、尿や便の色に変化が出たり、
⑧処方された以外の薬を使用するときは、医師や薬剤師と相談してから。
病気を早く治したいという気持ちから、指示された薬以外の薬(一般薬など)をかってに飲んだりしないでください。薬によっては、効果が予想以上に強く現れたり、逆に効果が減弱する場合があります。
処方された以外の薬を使うときは、必ず医師か薬剤師に相談してください。
⑨薬は、きちんと保管する。
使用後は、高温や湿気を避け、光の当たらない場所に保管するのが原則です。さらに、保管方法が指示されているものは、その指示をきちんと守ってください。
たとえば、冷所保管と指示されている場合は、きちんと冷蔵庫で保管します。ただし、冷凍庫で凍結させないように注意します。また、薬は小児の手のとどかない場所に置いておくことも大切です。
出典 病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版について 情報