虚栄の市(読み)キョエイノイチ(その他表記)Vanity Fair

翻訳|Vanity Fair

デジタル大辞泉 「虚栄の市」の意味・読み・例文・類語

きょえいのいち【虚栄の市】

原題Vanity Fairサッカレー長編小説。1847~1848年刊。虚栄に満ちた人間たちの俗物性を描き出し、当時の英国上流社会を鋭く風刺したもの。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「虚栄の市」の意味・読み・例文・類語

きょえいのいち【虚栄の市】

  1. ( 原題[英語] Vanity Fair ) 長編小説。サッカレー作。一八四七~四八年刊。虚栄にみちた、人間の俗物性を風刺したもの。作者の代表的作品

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「虚栄の市」の意味・わかりやすい解説

虚栄の市
きょえいのいち
Vanity Fair

イギリスの作家サッカレーの長編小説。1847~1848年にかけて月刊分冊の形式で発表。「虚栄の市」とは、バニヤンの有名な寓意(ぐうい)物語『天路歴程』のなかの地名で、人々が虚栄を大声で売っている場所だが、サッカレーは19世紀の上流社会の虚栄に満ちあふれた俗物根性を風刺して暴くために、この適切な表題を選んだ。副題に「ヒーローのない物語」とあるとおり、とくに際だった主人公はいないが、世の中を巧みに泳ぎ回り、群がる男どもをうまく利用して上流社会へのし上がるドライな女ベッキーシャープと、おとなしくてお人よしの女アミーリア・セドレーの2人の人生航路を中心に、さまざまな人物を配して、まさに19世紀イギリスの一大パノラマともなっている。

小池 滋]

『三宅幾三郎訳『虚栄の市』全6冊(岩波文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「虚栄の市」の意味・わかりやすい解説

虚栄の市 (きょえいのいち)
Vanity Fair

イギリスの小説家サッカレーの小説。1847-48年刊。ワーテルローの戦(1815)前後のイギリス社会を背景に,貧しい孤児の身から自らの美貌狡知を頼りに社交界に乗り出すベッキー・シャープと,裕福な商人の娘でおっとりして純情なアミーリア・セドリーの2人の学校友だちの人生行路を対比させながら描く一大社会絵巻であり,サッカレーの代表作である。多彩な登場人物,印象的な情景描写,皮肉で暖かい作者の感慨など,作者の力を十分に発揮した名作。1914-15年,平田禿木(とくぼく)によって翻訳された。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「虚栄の市」の意味・わかりやすい解説

虚栄の市
きょえいのいち
Vanity Fair

イギリスの小説家 W.M.サッカレーの代表作。 1847~48年に月刊分冊で刊行。貧しいが勝ち気で才気にあふれるベキー・シャープと,裕福だが引込み思案のアミーリア・セドレーという2人の対照的な女性の浮沈を中心に多数の人物を配して,ビクトリア朝社会のパノラマを繰広げ,上流崇拝などの人間の愚行を風刺した風俗小説。「ヒーロー (英雄=主人公) 不在の小説」と作者自身がいうように特異な作品であり,当時流行の小説技法をすべて裏返しにして用いた皮肉な作品となっている。題名はバニヤンの『天路歴程』からとったもの。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の虚栄の市の言及

【カラー映画】より

…しかし1932年,3色減色法の〈テクニカラー〉が完成し,このシステムによるウォルト・ディズニーのアニメーション漫画《森の朝》(1932)がアカデミー賞を受賞し,パイオニア社の音楽舞踊短編《クカラチャ》(1934)が作られ,《ロスチャイルド》(1934)のカラー・シークェンスにもこのシステムが使われた。そして,このシステムによる最初の長編劇映画《虚栄の市》(1935)で心理描写を色彩効果によって強調する独自の領域が開拓され,カラー映画も〈成人〉に達したと評価された。続いて《丘の一本松The Trail of the Lonesome Pine》(1936)ではテクニカラーによる最初の野外撮影が行われ,《砂漠の花園》(1936),《スタア誕生》(1937),イギリス映画《暁の翼》(1937)などを経て,《風と共に去りぬ》(1939)の成功によってカラー映画は一つの頂点に達し,〈テクニカラー〉は〈カラー映画〉の同義語になった。…

※「虚栄の市」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android