翻訳|Vanity Fair
イギリスの作家サッカレーの長編小説。1847~1848年にかけて月刊分冊の形式で発表。「虚栄の市」とは、バニヤンの有名な寓意(ぐうい)物語『天路歴程』のなかの地名で、人々が虚栄を大声で売っている場所だが、サッカレーは19世紀の上流社会の虚栄に満ちあふれた俗物根性を風刺して暴くために、この適切な表題を選んだ。副題に「ヒーローのない物語」とあるとおり、とくに際だった主人公はいないが、世の中を巧みに泳ぎ回り、群がる男どもをうまく利用して上流社会へのし上がるドライな女ベッキー・シャープと、おとなしくてお人よしの女アミーリア・セドレーの2人の人生航路を中心に、さまざまな人物を配して、まさに19世紀イギリスの一大パノラマともなっている。
[小池 滋]
『三宅幾三郎訳『虚栄の市』全6冊(岩波文庫)』
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…しかし1932年,3色減色法の〈テクニカラー〉が完成し,このシステムによるウォルト・ディズニーのアニメーション漫画《森の朝》(1932)がアカデミー賞を受賞し,パイオニア社の音楽舞踊短編《クカラチャ》(1934)が作られ,《ロスチャイルド》(1934)のカラー・シークェンスにもこのシステムが使われた。そして,このシステムによる最初の長編劇映画《虚栄の市》(1935)で心理描写を色彩効果によって強調する独自の領域が開拓され,カラー映画も〈成人〉に達したと評価された。続いて《丘の一本松The Trail of the Lonesome Pine》(1936)ではテクニカラーによる最初の野外撮影が行われ,《砂漠の花園》(1936),《スタア誕生》(1937),イギリス映画《暁の翼》(1937)などを経て,《風と共に去りぬ》(1939)の成功によってカラー映画は一つの頂点に達し,〈テクニカラー〉は〈カラー映画〉の同義語になった。…
※「虚栄の市」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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