蜻蛉玉(読み)トンボダマ(その他表記)eye beads

デジタル大辞泉 「蜻蛉玉」の意味・読み・例文・類語

とんぼ‐だま【蜻蛉玉】

色ガラスを象眼したガラス製の丸玉斑文トンボ複眼に似ていることからいう。日本では古墳時代の玉の一種

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「蜻蛉玉」の意味・読み・例文・類語

とんぼ‐だま【蜻蛉玉】

  1. 〘 名詞 〙 ガラス製丸玉の一つ。色ガラスの玉の表面に赤・黄・青などの二色以上のガラスを象嵌してさまざまな円文様を表わしたもの。古墳時代後期の副葬品として出土。とんぼの複眼に似ているところからいう。
    1. [初出の実例]「とんぼ玉、〈略〉焼物の如く見へて至極うつくし」(出典:万金産業袋(1732)三)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「蜻蛉玉」の意味・わかりやすい解説

トンボ(蜻蛉)玉 (とんぼだま)
eye beads

不透明の色付きガラスの表面に,異なった色のガラスを象嵌(象嵌玉)したり貼付して装飾文様を施した丸玉の一種。文様は同心円文や円文が圧倒的に多く,その形態がトンボの目玉に類似するところから,このように通称されているが,文様には線条文なども含まれる。象嵌の技術はかなり高度のもので,エジプト(第18王朝)やメソポタミアで前1500年ころに初めて出現し,以後,首飾のビーズとして東西に広まり,各地で制作された。とくに前6~後3世紀の地中海東岸地域,メソポタミア,イラン高原,戦国~漢時代の中国,イスラム初期のトンボ玉が著名である。中国には首飾のほかに,容器の表面にモザイク状に象嵌したものもある。また,中国のトンボ玉は,技術的には西方に由来するが,バリウムを多く含んだガラスの性質から中国で制作されたといわれる。日本では古墳の副葬品にみられるが,縞文様を表したものを,とくに雁木(がんぎ)玉と呼ぶ。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「蜻蛉玉」の意味・わかりやすい解説

蜻蛉玉
とんぼだま

古墳時代のガラス製丸玉の一種。母体となるガラス玉に、それとは色の異なるいくつかのガラスを象嵌(ぞうがん)して、さまざまな文様を表したもの。トンボの複眼を思わせる文様が多いことからこの名がつけられたらしい。古墳時代後期以降にみられるが、数は多くない。首飾りなどに、他の玉といっしょに使われたものであろう。古墳から出土するもののほか、奈良県飛鳥(あすか)寺の塔心礎(とうしんそ)からも出土している。

 似た玉で、二色以上の色ガラスを縞(しま)状にあわせてつくった玉を雁木玉(がんぎだま)という。これも蜻蛉玉と同じころに使われていた。

[望月幹夫]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「蜻蛉玉」の意味・わかりやすい解説

トンボ(蜻蛉)玉【とんぼだま】

2色以上の色ガラスを用い,表面に簡単な文様を散らしたガラス玉。英語ではeye beads。丸い斑文を表したものが多く,縞(しま)文様のあるものを特に雁木(がんぎ)玉という。前1500年ころエジプトやメソポタミアで出現し,各地に広まった。日本では中国から伝わり,古墳時代5―6世紀にみられる。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

事典 日本の地域ブランド・名産品 「蜻蛉玉」の解説

蜻蛉玉[ガラス]
とんぼだま

近畿地方、大阪府の地域ブランド。
藤井寺市で製作されている。蜻蛉玉とは、紐通しの穴が開いた硝子玉。由来は奈良時代に遡るという。江戸時代に長崎経由でオランダから再び技術が伝わり、大阪で盛んに製作された。現在では、ネックレスやループタイなども製作されている。大阪府伝統工芸品。

とんぼ玉[ガラス]
とんぼだま

関東地方、千葉県の地域ブランド。
千葉市で製作されている。とんぼ玉とは、紐通しの穴が開いた硝子玉。千葉県伝統的工芸品。

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報

世界大百科事典(旧版)内の蜻蛉玉の言及

【ガラス玉】より

…なお,正倉院宝物には,捩玉にくらべると簡単な細工の,数ヵ所に縦溝をつけたガラス玉もあるので,古墳時代の空玉(うつろだま)と同様に,これを山梔玉(くちなしだま)と呼んでいる。また,ガラス丸玉の表面に,ちがった色のガラス片を溶着したものをトンボ玉といい,正倉院宝物中の横縞文様のガラス玉もトンボ玉にふくめている。しかし,古墳出土の縦縞文様のガラス玉は,雁木玉と呼ぶことがある。…

【玉】より

…奈良時代に刺玉(さすだま)と呼んだものは,緒に刺し通す意味で,形からいえば丸玉あるいは小玉の類である。さらに特殊な形の玉として,蜜柑玉(みかんだま),山梔玉(くちなしだま)などの形の類似によるもの,捩玉(ねじだま)のように加工の方法によるもの,トンボ(蜻蛉)玉のように色彩の変化によるものなどの,変わった名称の玉もある。蜜柑玉は丸玉の表面に縦にくぼんだ溝をつけたもの,山梔玉は棗玉の表面に縦に溝をつけたものである。…

※「蜻蛉玉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

ドクターイエロー

《〈和〉doctor+yellow》新幹線の区間を走行しながら線路状態などを点検する車両。監視カメラやレーザー式センサーを備え、時速250キロ以上で走行することができる。名称は、車体が黄色(イエロー)...

ドクターイエローの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android