中国にはガラスを指す語が種々あるが,日本で採用したのは,〈琉璃(るり)〉または〈瑠璃(るり)〉である。734年(天平6)の《造仏所作物帳》に見る〈琉璃雑色玉〉は,その早い使用例である。奈良時代にはガラス玉をあらわす名称として,〈吹玉(ふきだま)〉という語もあって,《北倉代中間下帳》の766年(天平神護2)の条に,緑吹玉や青吹玉の名を見ることができる。当時,青色の玉があったとすれば,ガラス玉以外のものではありえない。ただし,この吹玉は,吹きガラス製の玉の意味ではなく,《延喜式》の〈御富岐玉(みふきだま)〉,あるいは《古語拾遺》の〈美保伎玉(みほぎだま)〉など,平安時代の名称と同系統の語であろう。《造仏所作物帳》の琉璃雑色玉は,数量の多いものからあげると,大刺玉(おおさしだま),丸玉,捩玉(ねじりだま),懸玉の4種に細分してある。刺玉は丸玉の5倍ほどの数があるから,今でいう小玉の類であろう。小刺玉の名も別にあって,形の大小で呼び分けたものと思われる。捩玉はガラスが固まる前に金属棒で押してくぼみをつけ,さらに捩って複雑な形に仕上げた玉であって,正倉院宝物に実例がある。以上の3種は貫通した緒孔をもつが,最後の懸玉は露滴状のもので,緒の末端を飾るための,孔の貫通しない玉かという。なお,正倉院宝物には,捩玉にくらべると簡単な細工の,数ヵ所に縦溝をつけたガラス玉もあるので,古墳時代の空玉(うつろだま)と同様に,これを山梔玉(くちなしだま)と呼んでいる。また,ガラス丸玉の表面に,ちがった色のガラス片を溶着したものをトンボ玉といい,正倉院宝物中の横縞文様のガラス玉もトンボ玉にふくめている。しかし,古墳出土の縦縞文様のガラス玉は,雁木玉と呼ぶことがある。さらに,古墳時代のガラス玉には,透明な丸玉の内壁に金箔を付着させた,金色に見えるものもあるが,これは日本製ではあるまい。
ガラスには鉛ガラスとソーダ石灰ガラスとの2種がある。この区別を考慮にいれてガラス玉の歴史をふりかえると,中国では戦国期に鉛ガラスのトンボ玉が流行し,アルカリ石灰ガラスの使用は漢代の耳璫(じとう)が初見である。日本の弥生時代のガラス玉には,鉛ガラスもアルカリ石灰ガラスも登場する。その製法も,巻きガラス製の管玉・丸玉・棗玉(なつめだま)があり,型ガラス製の勾玉があり,吹きガラス製の小玉・管玉も量は多い。そのうち勾玉は,土製の鋳型も福岡県赤井手遺跡や大阪府東奈良遺跡から出土しているので,日本で製作したことがわかる。巻きガラス製の玉も,輸入した鉛ガラスを用いて,日本で製作した可能性があるが,アルカリ石灰ガラスを用いた吹きガラス製の玉は,製品を輸入したものと考えたい。5世紀以降においても,古墳から出土するアルカリ石灰ガラスの玉には,形状や色彩などに新羅古墓出土品と共通する点が多く,製作地は朝鮮であったかもしれない。《造仏所作物帳》には,奈良時代にガラス刺玉を製作したときの材料明細書が残っているが,これは鉛ガラスを作るばあいのものである。
→ガラス工芸
執筆者:小林 行雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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