蟻通神社(読み)ありとおしじんじや

日本歴史地名大系 「蟻通神社」の解説

蟻通神社
ありとおしじんじや

[現在地名]田辺市湊

田辺市街を通るみなと本通り(旧熊野街道大辺路)沿いに南面して鎮座する。祭神天児屋根あめのこやね命。旧村社。江戸時代には蟻通明神社または御霊牛頭天王と称し、湊村の地主神(続風土記)。「神道集」に載る「蟻通明神事」は、玄弉三蔵が蟻の腰に糸をつけて八坂の玉(神璽)の七曲りの穴に緒を通したという蟻通の神の由緒来歴を述べたのち、

<資料は省略されています>

と記す。この話は古く「貫之集」に載る歌の詞書にみえ、道行く人々が蟻通明神を「年頃社もなくしるしも見えねどうたてある神なり」と話したことが記される。


蟻通神社
ありとおしじんじや

[現在地名]かつらぎ町東渋田

東渋田ひがししぶたの中央部南東山際にある。祭神は八意思兼やごころおもいかね命。脇社として八幡大神大国主おおくにぬし命・事代主ことしろぬし命を祀る。旧村社。正応六年(一二九三)三月二八日の太政官牒写(興山寺文書)に、天野四所あまのししよ明神(現かつらぎ町の丹生都比売神社)のうち「三大神号蟻通神」の神託のことがみえ、天野社にも蟻通神が祀られていた。蟻通神の名は七曲の玉のなかに糸を通すという難題説話に由来すると思われるが、右の史料によって当時の蟻通神は三大神ともよばれていたことがわかる。


蟻通神社
ありとおしじんじや

[現在地名]泉佐野市長滝

祭神は大名持命。旧郷社。もと現鎮座地よりも北方、紀州街道(熊野街道)沿いにあった。正応二年(一二八九)書写の「和泉国神名帳」に「従五位上有通社」とみえ、正和五年(一三一六)の日根野村絵図(九条家文書)には熊野街道の東、禅興ぜんこう寺の北に「穴通」と記される。

「紀貫之集」巻一〇の一首に付された詞書によると、貫之が紀伊国からの帰途馬が病に倒れた。通りかかった人から「ありとほしの神」に祈るよう勧められたが、幣がなかったことから歌を奉納した。その結果馬の病も治ったという。その時の歌が「かき曇りあやめもしらぬ大空にありとほしをは思ふへしやは」である。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蟻通神社」の意味・わかりやすい解説

蟻通神社
ありとおしじんじゃ

大阪府泉佐野市長滝に鎮座する元郷社。蟻通明神ともいう。祭神はオオナムチノミコト。『枕草子』『古事談』に記載される。例祭5月8日,10月 11日。ほかに奈良県吉野郡東吉野村の丹生 (にう) 川上神社も「蟻通さん」と呼ばれる。

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