田辺市(読み)タナベシ

デジタル大辞泉 「田辺市」の意味・読み・例文・類語

たなべ‐し【田辺市】

田辺

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日本歴史地名大系 「田辺市」の解説

田辺市
たなべし

面積:一三七・二四平方キロ

県南西端に位置したかつての西牟婁にしむろ郡の西北部、旧田辺町を核に成立した市。西から北は日高郡南部みなべ町・南部川みなべがわ村、東から南は西牟婁郡中辺路なかへち町・上富田かみとんだ町・白浜しらはま町、西南は田辺湾に面する。市の北部から東部は標高五〇〇―七〇〇メートルの山地が続き、この山地に源を発する芳養はや川・稲成いなり川、左会津ひだりあいづ川・右会津川(以上の二河川は下流で合して会津川となり、さらに稲成川を合せる)の諸河川が南流して田辺湾に注ぐ。河口付近は砂丘地で田辺の市街地として発達し、そのほかの海岸地帯は美しいリアス海岸である。

地名田辺は「水左記」承暦四年(一〇八〇)一一月一〇日条に「田辺」とみえるほか、「中右記」天仁二年(一一〇九)一〇月二二日条に「田之陪」、「吉記」承安四年(一一七四)九月二八日条・「後鳥羽院熊野御幸記」建仁元年(一二〇一)一〇月一二日条に「田辺」、「四辻殿御記」(「民経記」所収)承元四年(一二一〇)四月二七日条・応永三四年(一四二七)の「熊野詣日記」に「田部」などと、熊野参詣に関する記録に散見する。「平戸記」延応二年(一二四〇)正月一八日条には、大弐入道資経が熊野詣の帰途正月三日に「田部宿」で慧星を見たという話が記されている。

〔原始〕

田辺湾周辺と会津川流域に縄文遺跡が多い。縄文早期の貝塚として知られる高山寺こうざんじ貝塚は会津川河口より約一キロ上流の台地上にあり、この台地のやや北部の稲成町丸橋ばるばし丘からは、石核や縄文前期石器の原石岩が出土する。海岸沿いや先に列挙した諸河川上流にも中期以後の遺跡が散在するが、その規模は小さく遺物も少ない。弥生時代に入ると遺跡数も多くなり、諸河川流域の台地上から微高地および海岸付近に多くみられる。とくに右会津川中流にある秋津あきづ平地の微高地や周辺の丘陵上に中期から後期の遺跡が集中する。銅鐸も上秋津かみあきづ山田代やまだだい・同久保田口くぼたぐち、秋津町矢矧やはぎ矢田の谷やだヶたに下万呂しもまろ目座谷めざだにから出土しているが、現存は山田代銅鐸だけである。また芳養川流域にも後期の遺跡が散在し、はやし長屋谷ながやだに丘陵地のヒロサから古式銅鐸が出土している。田辺湾に面した海辺には製塩土器を出土する遺跡が多く、岩陰を利用した製塩遺跡として知られるもと町の古目良こめら遺跡は代表的遺跡。

古墳およびその時代の遺跡もまた海辺地域に集中している。群集墳としてかつて芳養・西にしたにみなとの各群集墳があった。うち湊群集墳は旧東西牟婁郡内屈指の規模を有した。この時代には海食によってできた岩陰を墳墓に利用した岩陰墓遺跡も多く、磯間いそまにある岩陰遺跡はその代表例である。


田辺市
たなべし

2005年5月1日:田辺市と日高郡龍神村、西牟婁郡中辺路町大塔村東牟婁郡本宮町が合併
【龍神村】和歌山県:日高郡
【中辺路町】和歌山県:西牟婁郡
【大塔村】和歌山県:西牟婁郡
【田辺市】和歌山県
【本宮町】和歌山県:東牟婁郡

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「田辺市」の意味・わかりやすい解説

田辺〔市〕
たなべ

和歌山県中南部,紀伊半島の南西部に位置する市。日高川富田川日置川熊野川の 4河川の流域に位置。南西部は田辺湾に臨み,北東で奈良県に接する。1942年市制。1954年までに 4村を編入し,1955年に西富田村(1958分離),1964年に牟婁町を編入。2005年龍神村,中辺路町,大塔村,本宮町の 4町村と合体。中心市街地は会津川河口に位置し,古くは熊野街道紀伊路の中辺路大辺路の分岐点にあたる交通の要地で,牟婁ノ津(むろのつ)と呼ばれた古い港町。中世,闘鶏神社(新熊野権現)を建立した熊野の別当の支配となり,江戸時代は紀州徳川氏の家老安藤氏の口熊野 3万8000石の城下町として栄えた。今日では中辺路一帯の木材の集散地で,外材輸入の多い文里港(もりこう)周辺には製材工場が多い。紀州備長炭(→白炭)や木工品も特産品。会津川河口付近は沖合漁業の中心地で,特産の南蛮焼かまぼこをはじめとする水産加工業が盛ん。南東部の本宮には熊野三山の一つ熊野本宮大社(国指定重要文化財)があり,中辺路,大辺路を中心とした熊野参詣道(国指定史跡)とともに,2004年に世界遺産の文化遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部をなす。ほかに高山寺貝塚三栖廃寺塔跡,磯間岩陰遺跡などの国の史跡があり,鳥巣半島の泥岩岩脈,栗栖川亀甲石包含層,暖地性植物群落のある神島(かしま。湾内)などが国の天然記念物に指定されている。市民による自然保護運動が盛んで,1987年に日本初の自然環境保全法人が認定された(→ナショナル・トラスト)。東部と西部は吉野熊野国立公園,北部は高野龍神国定公園城ヶ森鉾尖県立自然公園,中部は果無山脈県立自然公園,南部は大塔日置川県立自然公園に属する。海岸沿いを JR紀勢本線,国道42号線が通るほか,国道168号線,311号線,371号線,425号線などが通じ,阪和自動車道のインターチェンジがある。面積 1026.91km2。人口 6万9870(2020)。

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