出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
被とも書かれる。布帛(ふはく)で長方形につくり、寝るとき身にかける夜具。『万葉集』に「むし衾なごやが下に伏せれども」と柔らかな苧麻(からむし)の衾をかけたさまを歌っている。『延喜式(えんぎしき)』縫殿寮の巻、年中御服(ごふく)の条に紅(くれない)の被があげられ、綿入れで、褥(しとね)に対して入れる綿の量が2倍となっている。伊勢(いせ)神宮御神宝中にも錦(にしき)、綾(あや)、帛(はく)の被が伝えられている。『満佐須計(まさすけ)装束抄』に、御張台(みちょうだい)に敷く衾は、紅の打(うち)で襟のついていないもの、襟にあたるところに紅練糸(ねりいと)の左右撚(よ)り糸で三針差(みはりざし)といって縫い目の間隔を長短の順に置いた縫い方をするとある。『源氏物語』(柏木(かしわぎ))に「ふすまひきかけてふし給(たま)へり」と記している。
[高田倭男]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
被とも。掛蒲団の役目をする。なかに蒲(がま)の穂綿や絹わたなどをいれた布や革製の寝具。上流の人々は,床板の上に畳を敷き,上に衾をかけて寝た。材質によって麻衾・紙衾・むし衾などがあり,のちには敷衾(しきふすま)という寝具もでた。江戸時代になると木綿製で木綿わたをいれた蒲団にかわった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…褥は上蓆(うわむしろ)ともよばれるが,絹織物または藺蓆を表に,真綿や菅を芯にして四周に縁をつけたものである。掛具は衾(被)(ふすま)とよばれた。伏(ふ)す裳(も),つまり寝るときの衣服という意味である。…
…《勘仲記》や《綸旨抄》等に載る実例は口宣(くぜん)あるいは口宣案の形をしているので,鎌倉時代には口宣案をもって鎌倉幕府ないし六波羅探題に下されたものと考えられる。〈衾〉は寝るときからだにかける袷(あわせ)であるが,なぜ衾宣旨といわれるかは,定かではない。《松屋筆記》には,衾が身を覆うように,上から罪人を覆い捕らえる文書だからという。…
※「衾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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