(読み)フスマ

デジタル大辞泉 「衾」の意味・読み・例文・類語

ふすま【×衾/被】

布などで長方形に作り、寝るときにからだに掛ける夜具。綿を入れるのを普通とするが、袖や襟を加えたものもある。現在の掛け布団にあたる。 冬》「着てたてば夜の―もなかりけり/丈草

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「衾」の意味・読み・例文・類語

ふすま【衾・被】

  1. 〘 名詞 〙 寝る時にからだの上にかける長方形の夜具。綿を入れるのが普通で、袖や襟を付けたものもある。材料・模様などによって、麻ぶすま、紙ぶすま、まだらぶすま、むしぶすまなどがある。《 季語・冬 》
    1. 衾〈観普賢経冊子〉
      衾〈観普賢経冊子〉
    2. [初出の実例]「文垣の ふはやが下に 苧(むし)夫須麻(ブスマ)(にこ)やが下に 栲(たく)夫須麻(ブスマ) さやぐが下に」(出典:古事記(712)上・歌謡)

きん【衾】

  1. 〘 名詞 〙 布などでこしらえ、寝るときに体をおおう夜具。ふすま。よぎ。
    1. [初出の実例]「寝所置衾。或二領三領八十余所」(出典:参天台五台山記(1072‐73)三)
    2. [その他の文献]〔詩経‐召南・小星〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「衾」の読み・字形・画数・意味


10画

[字音] キン
[字訓] ふすま・きょうかたびら

[説文解字]

[字形] 形声
声符は今(きん)。〔説文〕八上に「大被なり」とあり、夜着をいう。篆文字形は今を衣中に加えており、衿(・襟)とは字義が異なる。〔儀礼、士喪礼〕に「(おほ)ふに衾を用ふ」とあり、経帷子(きょうかたびら)の類をいう。今は蓋栓の象形。上より蓋して覆い隠す意があり、衣中に今を加えるのは、本来は経帷子の意と思われる。

[訓義]
1. ふすま、よぎ、上より覆うもの。
2. きょうかたびら。

[古辞書の訓]
和名抄〕衾 布須万(ふすま) 〔名義抄〕衾 フスマ・フクロ 〔字鏡〕衾 フクロ・コロモノクビ・フスマ・スミカ・オホフ・ツヅル

[語系]
衾khim、gimは声義近く、は〔儀礼、士喪礼〕にみえ、単被の夜着、つけひものあるもの。やはり喪礼に用いた。

[熟語]
衾衣衾幃・衾影・衾材衾裳衾褥衾衽・衾・衾・衾衾枕・衾衾被衾冒
[下接語]
衣衾・鴛衾・霞衾・客衾・綺衾・旧衾・裘衾・錦衾・軽衾・孤衾・紅衾・紙衾・朱衾・秋衾・衾・新衾・清衾・疎衾・単衾衾・稠衾・枕衾・同衾・破衾・薄衾・被衾・布衾・文衾・抱衾・擁衾・羅衾・攬衾・鸞衾・綾衾

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「衾」の意味・わかりやすい解説


ふすま

被とも書かれる。布帛(ふはく)で長方形につくり、寝るとき身にかける夜具。『万葉集』に「むし衾なごやが下に伏せれども」と柔らかな苧麻(からむし)の衾をかけたさまを歌っている。『延喜式(えんぎしき)』縫殿寮の巻、年中御服(ごふく)の条に紅(くれない)の被があげられ、綿入れで、褥(しとね)に対して入れる綿の量が2倍となっている。伊勢(いせ)神宮御神宝中にも錦(にしき)、綾(あや)、帛(はく)の被が伝えられている。『満佐須計(まさすけ)装束抄』に、御張台(みちょうだい)に敷く衾は、紅の打(うち)で襟のついていないもの、襟にあたるところに紅練糸(ねりいと)の左右撚(よ)り糸で三針差(みはりざし)といって縫い目の間隔を長短の順に置いた縫い方をするとある。『源氏物語』(柏木(かしわぎ))に「ふすまひきかけてふし給(たま)へり」と記している。

[高田倭男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「衾」の意味・わかりやすい解説


ふすま

被とも書く。寝具一種。現在の掛けぶとんのようなもので,平安時代から宮中で用いられた。長さ約8尺 (約 240cm) の四角形で,袖も縁もないが,首のほうに紅の練り糸を太くひねって2筋並べ3針さして目印とした。一般にも紙衾などが用いられたが,東北地方には,袖や襟のついた着物の形をした夜衾がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「衾」の解説


ふすま

被とも。掛蒲団の役目をする。なかに蒲(がま)の穂綿や絹わたなどをいれた布や革製の寝具。上流の人々は,床板の上に畳を敷き,上に衾をかけて寝た。材質によって麻衾・紙衾・むし衾などがあり,のちには敷衾(しきふすま)という寝具もでた。江戸時代になると木綿製で木綿わたをいれた蒲団にかわった。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【寝具】より

…褥は上蓆(うわむしろ)ともよばれるが,絹織物または藺蓆を表に,真綿や菅を芯にして四周に縁をつけたものである。掛具は衾(被)(ふすま)とよばれた。伏(ふ)す裳(も),つまり寝るときの衣服という意味である。…

【衾宣旨】より

…《勘仲記》や《綸旨抄》等に載る実例は口宣(くぜん)あるいは口宣案の形をしているので,鎌倉時代には口宣案をもって鎌倉幕府ないし六波羅探題に下されたものと考えられる。〈衾〉は寝るときからだにかける袷(あわせ)であるが,なぜ衾宣旨といわれるかは,定かではない。《松屋筆記》には,衾が身を覆うように,上から罪人を覆い捕らえる文書だからという。…

※「衾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android