被爆体験者(読み)ひばくたいけんしゃ

共同通信ニュース用語解説 「被爆体験者」の解説

被爆体験者

長崎原爆の爆心地から半径12キロ圏内のうち被爆者援護法に基づく南北約12キロ、東西約7キロの援護区域外で原爆に遭った人。第2種健康診断受診者証が交付され、被爆体験に起因する精神疾患合併症に認定されると、医療費が支給される。国は2002年、この事業を援護法枠外で始めたが、放射線影響は認めず、被爆者健康手帳を交付していない。昨年4月、7種類のがんを対象に加えるなど支給対象を広げた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「被爆体験者」の意味・わかりやすい解説

被爆体験者
ひばくたいけんしゃ

1945年(昭和20)の長崎原爆投下時に、爆心地から半径12キロメートル圏内にいながら、国が定めた被爆地域(爆心地から南北に約12キロメートル圏内、東西に約7キロメートル圏内の楕円(だえん)形状)外にいた人たち。健康診断の結果、被爆体験による特定精神疾患にかかっているとされた人は、被爆体験者精神医療受給者証を交付され、精神疾患とその合併症に限って医療費(自己負担分)を助成される。しかし被爆地域の外にいたため、原則として被爆者とは認定されず、被爆者健康手帳は交付されない。被爆体験者は「放射線による直接的な身体への健康被害はない」とされており、被爆者のような医療費の原則無料措置や健康管理手当支給などの援護を受けられない。2016年(平成28)1月時点で、医療費の一部助成を受けている被爆体験者は6732人。なお同じ被爆地でも、広島には被爆体験者制度は設けられていない。

 長崎の原爆投下をめぐっては、被爆地域外で被爆した人々のなかでも救済を求める人が後を絶たないため、国は2002年、長崎原爆の爆心地から半径12キロメートル圏内の被爆地域外で原爆投下の被害にあった人を対象に、一部の医療費を助成する長崎被爆体験者支援事業を開始した。支援事業開始当時は、その時点で爆心地から半径12キロメートル圏内に住んでいないと支援対象にならなかったが、2005年に長崎県内の居住者に拡大された。また当初、医療費助成の対象は「感染症・がん・外傷以外の健康被害」であったが、2005年から「精神疾患とその合併症」に絞り込まれた。被爆者と被爆体験者に対する国の医療費助成の差が大きいため、2007年以降、被爆体験者が相次いで被爆者健康手帳の交付を求めて訴えを起こしている。2016年2月には、長崎地方裁判所が被爆地域外で原爆投下の被害にあった被爆体験者でも、年間積算被曝(ひばく)線量が25ミリシーベルトに達したと推定される場合には、被爆者と認める判決を出した。

[矢野 武 2016年9月16日]

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