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被爆体験者

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

被爆体験者

長崎原爆の投下時、国が定める被爆地域(南北約12キロ、東西約7キロ)の外にいたために被爆者と認められない人たち。胃炎や関節痛など一部の病気は原爆に遭ったことによる精神的影響とみなされ、医療費が給付される。一方で放射線の影響は否定され、がんなどは対象外。医療費が原則無償となる被爆者とは受けられる援護に差がある。 こうした援護の差の解消を求め、07年には長崎市深堀町の住民らが県や市を相手に提訴。11年には諫早市多良見町の住民らが第2陣として提訴した。 昨年2月の長崎地裁判決は第2陣の原告のうち10人を被爆者と認めたが、原告・被告の双方が控訴。福岡高裁で審理が続き、原告側は専門家の意見書を追加し、被爆地域外でも放射線の影響があったと主張している。 今年11月で最初の提訴から10年。第1陣は395人、第2陣は161人(それぞれの1審判決時)いた原告のうち、これまでに計87人が亡くなった。

(2017-02-22 朝日新聞 朝刊 長崎・1地方)

出典 朝日新聞掲載「キーワード」朝日新聞掲載「キーワード」について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

被爆体験者
ひばくたいけんしゃ

1945年(昭和20)の長崎原爆投下時に、爆心地から半径12キロメートル圏内にいながら、国が定めた被爆地域(爆心地から南北に約12キロメートル圏内、東西に約7キロメートル圏内の楕円(だえん)形状)外にいた人たち。健康診断の結果、被爆体験による特定精神疾患にかかっているとされた人は、被爆体験者精神医療受給者証を交付され、精神疾患とその合併症に限って医療費(自己負担分)を助成される。しかし被爆地域の外にいたため、原則として被爆者とは認定されず、被爆者健康手帳は交付されない。被爆体験者は「放射線による直接的な身体への健康被害はない」とされており、被爆者のような医療費の原則無料措置や健康管理手当支給などの援護を受けられない。2016年(平成28)1月時点で、医療費の一部助成を受けている被爆体験者は6732人。なお同じ被爆地でも、広島には被爆体験者制度は設けられていない。
 長崎の原爆投下をめぐっては、被爆地域外で被爆した人々のなかでも救済を求める人が後を絶たないため、国は2002年、長崎原爆の爆心地から半径12キロメートル圏内の被爆地域外で原爆投下の被害にあった人を対象に、一部の医療費を助成する長崎被爆体験者支援事業を開始した。支援事業開始当時は、その時点で爆心地から半径12キロメートル圏内に住んでいないと支援対象にならなかったが、2005年に長崎県内の居住者に拡大された。また当初、医療費助成の対象は「感染症・がん・外傷以外の健康被害」であったが、2005年から「精神疾患とその合併症」に絞り込まれた。被爆者と被爆体験者に対する国の医療費助成の差が大きいため、2007年以降、被爆体験者が相次いで被爆者健康手帳の交付を求めて訴えを起こしている。2016年2月には、長崎地方裁判所が被爆地域外で原爆投下の被害にあった被爆体験者でも、年間積算被曝(ひばく)線量が25ミリシーベルトに達したと推定される場合には、被爆者と認める判決を出した。[矢野 武]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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