裁判迅速化法(読み)さいばんじんそくかほう

知恵蔵の解説

裁判迅速化法

国民の権利利益が司法において的確に実現されるために、適正で充実した手続きの下で裁判の迅速化を図る趣旨及び国の責務等を定める法律。司法制度改革推進本部顧問会議の提言を受けて、2003年に成立した。審理期間の目標として、第1審の訴訟手続きを2年以内のできる限り短い期間内に終えることなどを掲げ、目標の実現のために、法曹人口の大幅な増加や訴訟手続きの整備等、必要な施策を策定・実施する国の責務、国民による弁護士利用を容易にするために体制を整備する日本弁護士連合会の責務などを定めている。裁判所に対しては、訴訟手続きを集中的かつ効率的に行うことなどが求められると共に、裁判の迅速化に関する総合的で多角的な検証を行い、2年ごとにその結果を公表することを最高裁に求めている。既に、必要な制度的措置として、民事訴訟では、計画審理の推進や証拠収集手段の拡充が、刑事訴訟では、公判前整理手続きの創設などが行われている。

(土井真一 京都大学大学院教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

裁判迅速化法
さいばんじんそくかほう

裁判の迅速化等を図る目的で2003年(平成15)に制定された法律。正式名称は「裁判の迅速化に関する法律」(平成15年法律第107号)。裁判迅速化法は、司法を通じて権利利益が適切に実現され、司法がその役割を十全に果たすためには、公正かつ適正で充実した手続の下で裁判が迅速に行われることが不可欠であることから、第一審の訴訟手続をはじめとする裁判所における手続全体のいっそうの迅速化を図り、もって国民の期待にこたえる司法制度の実現に資することを目的としている(裁判迅速化法1条)。これにより、第一審の訴訟手続については2年以内のできるだけ短い期間内にこれを終局させることを目標として、充実した手続を実施すること、ならびにこれを支える制度および体制の整備を図ること(同法2条1項)とされた。
 憲法第37条第1項は、迅速な裁判を受ける権利を被告人に保障した。刑事訴訟法第1条も、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現することを刑事訴訟法の目的としている。最高裁判所も、15年間も公判期日が定められなかった高田事件(1952年に愛知県名古屋市で発生した高田巡査派出所への襲撃を含む集団暴力事件。審理途中で15年余の中断があった)について、憲法の迅速な裁判の保障に反する異常な事態が生じたときには、もはや審理の続行を許さず、免訴の判決で手続を打ち切るべき旨を判示した(最高裁判所昭和47年12月20日大法廷判決)。
 とくに、裁判員の参加する裁判では、審理を迅速でわかりやすいものとする(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律51条)ことが求められる。そのために、できる限り公判を連日開廷することができるようにするための規定(刑事訴訟法281条の6)、公判審理を継続的、計画的かつ迅速に行うための公判前整理手続の制度などが導入された(同法316条の2、316条の3)。なお、特別な事件についての法律規定として、たとえば、選挙違反事件についてのいわゆる百日裁判規定がある(公職選挙法213条・253条の2)。これは、事件を受理した日から100日以内に判決するよう努める義務を定めたものであるが、おもに政治家の地位に影響を及ぼす刑事事件を早期に確定する趣旨の規定である。
 裁判迅速化法は、裁判の迅速化の現状を検証して、その結果を2年ごとに国民に公表することを最高裁判所に求めている(裁判迅速化法8条)。2016年(平成28)の民事第一審訴訟事件は、平均8.6か月であり、刑事第一審訴訟事件は、平均3.2か月(自白事件は2.6か月、否認事件は8.7か月)となっている。なお、裁判員対象事件では平均10.0か月となっている。[田口守一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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