褐斑病(読み)カッパンビョウ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「褐斑病」の意味・わかりやすい解説

褐斑病
かっぱんびょう

植物の病気の一種で、おもに葉に褐色の斑点ができる。80種以上の作物に発生し、病原菌も多種で20以上の属に及んでいる。もっとも多いのは不完全菌のケルコスポラCercospora属菌によるもので、アズキインゲンマメササゲなどのマメ類、テンサイサトウダイコン)、ホップ、アスパラガスホウレンソウ、カーネーション、シャクヤクなどに発生する。ついでセプトリアSeptoria属菌(ツツジ、キク、ヒマワリなど)、アスコキータAscochyta属菌(ソラマメエンドウ、タバコなど)、フィロスティクタPhyllosticta属菌(ビワアオキなど)や子嚢(しのう)菌のミコスファエレラMycosphaerella属菌(ラッカセイダイズ、ナシなど)のほか、カバティエラKabatiella属菌(トウモロコシ)、コリネスポラCorynespora属菌(キュウリ、メロンなど)がある。発生がひどいと多数の病斑(びょうはん)ができて葉が枯れる。テンサイ、ラッカセイ、ソラマメ、ツツジ、キク、トウモロコシなどで被害が大きい。発生が多いときは、ジネブ剤、TPN剤(「ダコニール」)などの殺菌剤を散布して防ぐ。

[梶原敏宏]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

飼料作物病害図鑑 「褐斑病」の解説

褐斑病(トウモロコシ)

冷涼地で被害の大きい糸状菌病。葉や葉鞘に、中央部灰白色、周縁部褐色、円形、大きさ1ー3mmの病斑を多数形成する。病斑部を日に透かしてみると、周囲に淡黄色水浸状のかさができているのが特徴である。特に風当たりの強いところで発生が多い。病原菌は比較的低温で良く生育し、寄主範囲は狭い。

褐斑病(ブルーグラス)

進展すると多数の植物体の枯死を引き起こす糸状菌病。発生初期は楕円形から紡錘形の周辺部赤褐色の病斑が散発するが、病勢が進むと冠根部や根も侵し、株枯 れを引き起こす。結果として芝地の衰退を引き起こし、"Melting-out"となる。病原菌はヘルミントスポリウム菌の一種。

褐斑病(シロクローバ)

主に葉に発生する斑点性の糸状菌病。病斑は中央部濃褐色、周縁部灰白色で、円形から楕円形、長さ2-5mm程度となる。病斑にはうすい輪紋が形成されるこ とがあり、表面には黒色小粒(柄子殻)を生じる。病斑は相互に融合して葉を枯死させる。病原菌はアカクローバにも寄生する。

褐斑病(リードカナリーグラス)

葉枯を引き起こす糸状菌病。病斑は葉および葉鞘に形成され、初め褐色から黄白色の楕円形斑だが、次第に広がり、黄褐色で周縁部が不明瞭な斑点になる。病斑は多数形成され、相互に融合し、葉全体が黄褐色に枯れる。夏の終わりから秋にかけて最もまん延する。

褐斑病(ブロムグラス)

北海道で発生し、特にスムーズブロムグラスで被害が大きい。病徴は葉身および葉鞘上に褐色,紡錘形,5〜10×1〜3 mm,周囲に黄色のハローをもつ病斑を形成する。本病に対する抵抗性品種が育成されている。

出典 畜産草地研究所飼料作物病害図鑑について 情報

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