西川流(読み)ニシカワリュウ

デジタル大辞泉 「西川流」の意味・読み・例文・類語

にしかわ‐りゅう〔にしかはリウ〕【西川流】

日本舞踊流派の一。初世西川千蔵流祖とするが、流儀として確立したのは2世扇蔵。江戸中期から後期にかけて、江戸の歌舞伎劇場の振り付けを行い流勢を誇った。分派として名古屋西川流正派西川流とがある。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「西川流」の意味・読み・例文・類語

にしかわ‐りゅうにしかはリウ【西川流】

  1. 〘 名詞 〙
  2. にしかわは(西川派)
    1. [初出の実例]「号 自得斎(一号)文華堂 称大和絵師(世に西川流と云)」(出典:随筆・増補浮世絵類考(1844)西川祐信)
  3. ( 「にしがわりゅう」とも ) 日本舞踊の一派。江戸の西川仙蔵を祖とし、二世扇蔵が振付師として活躍。特に藤間流三代の門人勘助が四世扇蔵を継いで盛行し、名古屋西川流の祖西川鯉三郎、花柳流の祖花柳寿輔らを輩出した。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「西川流」の意味・わかりやすい解説

西川流
にしかわりゅう

日本舞踊の一流派。

(1)(宗家)西川流 初世仙蔵に始まり、江戸中期に2世扇蔵が確立、現在まで10世を数える。藤間流の影響が濃く、縁故も深い。2世、4世が名振付師として知られ、2世は『関の扉(せきのと)』『双面(ふたおもて)』『戻駕(もどりかご)』などの劇舞踊に、4世は『勧進帳』や、また、多くの変化舞踊に傑作を残した。4世の門下から(名古屋)西川流、花柳(はなやぎ)流、七扇(ななおうぎ)流などが生まれ、さらに今日の多くの流派が派生している。

(2)(名古屋)西川流 西川鯉三郎(こいさぶろう)が流祖で、1841年(天保12)に始まる。母体である宗家西川流に、篠塚(しのづか)流や能、狂言を摂取。明治期には宗家西川流にかわる勢力を誇った。2世鯉三郎は歌舞伎(かぶき)出身の特色を生かした技芸新味ある振付けに実力を発揮。主宰する鯉風会や名古屋おどり、また東宝歌舞伎、花街舞踊などに腕を振るい、文芸作品の舞踊化でも注目された。1983年(昭和58)没。3世家元はその長男西川右近(うこん)(1939―2020)が継承。長女左近(さこん)(1937― )は1985年、西川流鯉風派をたて、分裂した。

(3)(正派)西川流 7世扇蔵の門弟喜代春(1874―1931)が西川喜洲(にしかわきしゅう)を名のり、1916年(大正5)に樹立。現4世に至る。

[如月青子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「西川流」の意味・わかりやすい解説

西川流
にしかわりゅう

日本舞踊の流派の1つ。古くは「にしがわ」と発音した。流祖は1世西川仙 (千) 蔵 (?~1756) で,能の囃子方から歌舞伎の鳴物師に転じ,舞踊の振付の才能もあったという。2世西川扇蔵,4世西川扇蔵は振付の名人といわれ,多数の傑作を残した。とりわけ4世は西川流の全盛期を築き,その門弟から5世扇蔵,1世西川鯉三郎 (名古屋西川流祖) ,西川芳次郎 (のちの花柳流祖花柳寿輔 ) らの秀才が輩出した。5世扇蔵 (?~60) は4世の高弟巳之助が襲名し,『操三番』『京人形』などを残した。その後明治に入って,直系はよい後継者が得られず,傍流の名古屋西川流が栄え,1916年には3世西川巳之助の門弟喜代春 (75~1931) が正派西川流と称して別派を立て,家元喜州となった。直系の宗家西川流は 35年に9世扇蔵の実子が 10世を襲名。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「西川流」の意味・わかりやすい解説

西川流 (にしかわりゅう)

日本舞踊の流派。初世西川千蔵(仙蔵)を流祖とする代々の西川扇蔵は歌舞伎振付師であったが,明治になり直系が絶えて歌舞伎と離れた。以後,家系は門弟筋によって継承され,現家元は10世扇蔵である。扇蔵家のほかに4世扇蔵から分かれた西川鯉三郎が名古屋西川流を創立。2世鯉三郎亡きあと現家元は西川右近(1939- )である。別に大正初年,扇蔵家から分かれた正派西川流があり,現家元は4世西川喜洲である。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「西川流」の意味・わかりやすい解説

西川流【にしかわりゅう】

日本舞踊の流派。宝暦年間の江戸の囃子(はやし)方西川千蔵(仙蔵)〔?-1756〕に始まる。4世〔1792-1845〕は《勧進帳》《靭猿》などで江戸三座の振付師として活躍。現在は10世〔1928-〕。4世の門弟西川鯉三郎〔1823-1900〕は名古屋西川流を興し,2世〔1909-1983〕は東京にも進出した。正派西川流は7世扇蔵の門弟西川喜洲が興したもの。
→関連項目花柳寿輔花柳寿楽

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

デジタル大辞泉プラス 「西川流」の解説

西川流

日本舞踊の流派のひとつ。江戸時代、歌舞伎の鳴物師から振付師に転じた西川仙蔵(初代)が創流。2代目以降、家元は西川扇藏を名乗る。「名古屋西川流」「西川流鯉風派(りふうは)」など、多くの分派の祖。日舞五大流派のひとつとされる。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の西川流の言及

【日本舞踊】より

…しかし流派はまた新しい流派や分派を生み,宗家,分家家元などの名称も生じており,現在流派の数は150を超え,今後ますます分派していく傾向にある。 振付師から出た流派では,志賀山万作を流祖とする志賀山流,江戸の振付師藤間勘兵衛から出た藤間流,西川仙蔵を祖とする西川流,幕末期から明治にかけて活躍した初世花柳寿輔が開いた花柳流,若柳吉松の若柳流や,市山七十郎の市山流等がある。また俳優の家から出たものに3世中村歌右衛門を初世とする中村流があり,同じ中村流を名のるものに,初世中村富十郎を祖とするもの,中村弥八(1703‐77)を祖とする虎治派,3世坂東三津五郎より出た坂東流があり,そのほか水木流,岩井流,市川流,尾上流等がある。…

※「西川流」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android