日本舞踊(宗家)西川流の宗家家元名。能の囃子(はやし)方から歌舞伎(かぶき)の鳴物師となり、舞踊にも通じていた西川仙蔵(1698―1756)を初世とし、今日まで10世を継承。
(1718―1808)初世の門弟千蔵で、扇蔵と改める。宝暦(ほうれき)~文化(ぶんか)期(1751~1818)にかけての江戸歌舞伎の名振付師で、『鷺娘(さぎむすめ)』『鞍馬獅子(くらまじし)』『関の扉(せきのと)』などを残し、流儀を確立した。3世(生没年未詳)は2世の門弟が継ぐ。
(1792―1845)3世藤間勘兵衛の高弟藤間勘助が襲名。中村座・市村座の振付師を兼ね、振付けの名人とうたわれ、『勧進帳(かんじんちょう)』『藤娘(ふじむすめ)』『六歌仙(ろっかせん)』『靭猿(うつぼざる)』等々がある。門下から多くの名手を世に出した。5世(?―1860)は4世の高弟。6世は2世藤間勘右衞門(かんえもん)が養子となって継いだが離別。7世(1839―1923)は5世の実子。8世(1857―1923)は7世の女弟子で、扇造を名のる。9世(1906―1935)は8世の養女で、夭折(ようせつ)。
(1928―2023)9世の実子が1935年(昭和10)に7歳で襲名した。1970年代からの活躍が目だち、泉徳右衛門(いずみとくえもん)(1924―1991)、花柳芳次郎(はなやぎよしじろう)(4世花柳寿輔(じゅすけ))との「三樹会」公演や、自身の会を続け、秀作『七騎落(しちきおち)』や『夢の富』などがある。平成期に入ってからは「素の会」も始め、回を重ねた。1990年(平成2)日本舞踊振興財団を設立。『鳴神(なるかみ)』『俊寛(しゅんかん)』などのアメリカ公演を企画するなど、日本舞踊の普及に尽力した。1989年紫綬褒章(しじゅほうしょう)、2009年(平成21)旭日小綬章(きょくじつしょうじゅしょう)受章。1999年には重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定され、2021年(令和3)文化功労者となった。
[如月青子]
歌舞伎振付師。(1)初世(?-1756(宝暦6)) 鳴物師で仙蔵といった。(2)2世(?-1817(文化14)) 初世藤間勘兵衛の門弟で1760年(宝暦10)扇蔵と改名。初世中村仲蔵の所作事《鞍馬獅子》《関の扉》《高砂丹前》《勢い》《戻駕》《鬼次拍子舞》などの振付を手がけた。(3)3世 生没年不詳。2世の門弟巳之助がつぐ。(4)4世(1797-1845・寛政9-弘化2) 3世藤間勘兵衛の高弟勘助が3世扇蔵没後,1824年(文政7)扇蔵をつぎ,その才腕が西川流の全盛期をつくった。その振付には《お染》《宗清》《鳶奴》《三つ面子守》《六歌仙》《勧進帳》など佳品が多い。(5)5世(?-1860(万延1)) 高弟巳之助がつぎ,《乗合船》《操三番叟》などを残した。(6)6世 2世藤間勘右衛門が一時つぐ。(7)7世 5世扇蔵の実子巳之助がつぐ。(8)8世・9世 婦人がつぐ。(9)10世 9世尾村保子の実子広一郎がついだ。
執筆者:柴崎 四郎
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明治・大正期の日本舞踊家 西川流家元(8代目)。
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(古井戸秀夫)
(古井戸秀夫)
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…作曲初世杵屋(きねや)正次郎。振付2世西川扇蔵。春の日,寺子屋帰りの娘が日傘や手習草紙を手に道草をするさまを描く。…
…本名題《狂乱雲井袖(きようらんくもいのそで)》。作詞初世瀬川如皐,作曲初世杵屋正次郎,振付2世西川扇蔵。顔見世狂言《重重人重小町桜(じゆうにひとえこまちざくら)》の一番目大詰に作られ,小野小町の難を救うため,上使の前で偽の狂乱を見せる小町の父良実を舞踊化したもの。…
…作曲初世鳥羽屋里長。振付2世西川扇蔵ほか。京の紫野で,島原の廓からの戻駕に禿(かむろ)を乗せた浪花の次郎作実は石川五右衛門と,東の与四郎実は真柴久吉が,互いに浪花と江戸の自慢を始め,禿と廓話(くるわばなし)をし,実名の見顕し(みあらわし)となる。…
…作曲初世富士田吉治,初世杵屋作十郎。振付2世西川扇蔵。源義家の危難を,鷹の精が救うという筋にからみ,義家は男鳥売り(9世市村羽左衛門),鷹の精は女鳥売りという役柄で,放生会(ほうじようえ)の故事から吉原の廓の諸分(しよわけ)をうたったもの。…
…1824年(文政7)5月,3世坂東三津五郎,7世市川団十郎ほかにより江戸市村座で初演。2世桜田治助作詞,初世清元斎兵衛作曲,3世西川扇蔵らの振付。朝顔売,水売,芸者がそれぞれの酔態をみせる。…
…歌舞伎十八番の一つ。3世並木五瓶作,4世杵屋(きねや)六三郎作曲,4世西川扇蔵振付。1840年(天保11)3月江戸河原崎座初演。…
…作曲10世杵屋(きねや)六左衛門。振付4世西川扇蔵。通称《雨の五郎》《時致(ときむね)》。…
…1824年(文政7)5月,3世坂東三津五郎,7世市川団十郎ほかにより江戸市村座で初演。2世桜田治助作詞,初世清元斎兵衛作曲,3世西川扇蔵らの振付。朝顔売,水売,芸者がそれぞれの酔態をみせる。…
…鰹を取り返そうとするさまや鳥刺の振りなどを見せる軽快な踊り。のちに8世団十郎は4世西川扇蔵による別の振付で踊った。【如月 青子】。…
…流祖は初世花柳寿輔(じゆすけ)。寿輔は4世西川扇蔵の門弟として西川芳次郎を名のったが,4世扇蔵の没後,西川流から独立して,1849年(嘉永2)花柳芳次郎と改名,花柳流を創立した。初世は振付の才能に恵まれ,幕末から明治の劇壇で名振付師として活躍したが,9世市川団十郎と不和が生じ,劇壇から遠ざかり,1903年没した。…
…作曲10世杵屋(きねや)六左衛門,3世岸沢式佐。振付4世西川扇蔵,藤間大助ほか。じゅばん一枚の男が瓢簞で鯰を押さえようとする大津絵から題材をとった作品。…
…作曲4世杵屋六三郎。振付藤間大助(2世藤間勘十郎),4世西川扇蔵。大津絵にある藤の枝をかついだ娘が絵からぬけ出して踊る趣向であるが,6世尾上菊五郎が1937年3月に藤の花の精として上演して以来,これを踏襲することが多い。…
…1836年(天保7)7月江戸市村座一番目狂言《世善知鳥相馬旧殿(よにうとうそうまのふるごしよ)》の六建目大詰に初演。作詞宝田寿助,作曲5世岸沢式佐,振付4世西川扇蔵。傾城如月(きさらぎ)実は平将門の娘滝夜叉姫を市川九蔵,源頼信の臣大宅太郎光圀を12世市村羽左衛門が演じた。…
…作曲10世杵屋六左衛門,初世清元斎兵衛。振付2世藤間勘十郎,4世西川扇蔵,中村勝五郎。僧正遍照,在原業平,文屋康秀,喜撰法師,大伴黒主を踊り分ける五変化で,それぞれが小野小町(《喜撰》では茶汲女,《文屋》では陰の存在)に思いを寄せるが受け入れられない。…
…作曲5世岸沢式佐。振付西川七郎次,西川巳之助(5世西川扇蔵),西川芳次郎,花川蝶十郎。初春の隅田川の渡し場で万歳,才蔵(造),白酒売,大工,通人,巫女,船頭が芸づくしの仕抜(しぬき)を踊る。…
…(2)2世(1840‐1925∥天保11‐大正14) 亀三(かめさ)勘十郎に師事し9世市川団十郎の知遇を得て,20世紀初頭の名振付師となった。一時6世西川扇蔵をついだ。おもな振付に《鏡獅子》《お夏狂乱》がある。…
…日本舞踊の流派。初世西川千蔵(仙蔵)を流祖とする代々の西川扇蔵は歌舞伎振付師であったが,明治になり直系が絶えて歌舞伎と離れた。以後,家系は門弟筋によって継承され,現家元は10世扇蔵である。…
…作曲初世杵屋正次郎。振付2世西川扇蔵。江戸の初春,吉原の廓の門口で,禿が羽根つきをして無邪気に遊ぶ風景を描写。…
※「西川扇蔵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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