[認証評価制度の概要]
国公私のすべての大学,短期大学,高等専門学校(以下,大学等という)に対して,認証評価機関の評価を定期的に受けることを義務づけた制度を認証評価制度という。2003年(平成15)の学校教育法改正時に規定され,2004年から実施に移された。文部科学省は認証評価の目的を,①評価結果が公表されることにより大学等が社会による評価を受けること,②評価結果を踏まえて大学等が自ら改善を図ることとしている。
日本では長らく,大学等の最低基準を「設置基準」として定めること,設置基準を担保するために大学等に対して行われる「設置認可審査」が厳格に行われることによって大学等の水準の維持が行われてきた。しかし,大学等を設置する際の入口審査だけでは不十分で,設置後にどのような教育活動が行われているかをチェックする必要があると考えられるようになってきた。また,いわゆる進学率の上昇によって大学がユニバーサル化し,大学で提供される教育の質に対する社会の関心が高まってきたこと,進学者の増加と多様化によって社会が成熟したことで,大学等もその社会変化や進学者のニーズに対応することが求められるようになった。そこで,文部科学省による入口審査を緩和し,大学の自律的な活動を促しつつ,その結果を確認するシステムを設けるという政策変更が必要となった。こうした状況から導入された「認証評価」は,「設置基準」「設置認可審査」とともに日本の高等教育の公的な質保証の3本の柱として位置付けられている。
[認証評価の仕組み]
認証評価には,機関別認証評価と専門職大学院認証評価がある。機関別認証評価は大学等の教育研究,組織運営および施設設備の総合的な状況についての評価で,すべての大学等は7年以内ごとに評価を受けなければならない。専門職大学院認証評価は専門職大学院の教育課程,教員組織その他教育研究活動の状況に関する評価で,専門職大学院は機関別認証評価とは別に5年以内ごとに評価を受けることが義務づけられている。認証評価を行おうとする機関は文部科学大臣によって認証を受けることが必要であり,認証されるための基準は法令で詳細に定められている。認証評価には大学等が設置認可時の水準を維持していることをチェックするとともに,各大学等の個性の伸長と教育研究の向上を支援するという二つの役割が課されている。
認証評価のための基準は認証評価機関が独自に定めることとされているが,評価基準に含めるべき評価領域は機関別認証評価7領域,法科大学院を除く専門職大学院認証評価4領域が定められている。法科大学院に関しては13領域と格段に多く,詳細かつ厳格に評価が行われている。複数の認証評価機関がある場合,いずれの機関を選択するかは大学の判断で決定できる。機関別認証評価,専門職大学院認証評価のいずれも,同じ評価対象または専門分野で複数の認証評価機関が存在することは,大学等の多様性に即しており,評価機関の個性ともいえるが,一方で評価の水準や厳格性に差が出ることで評価の信頼性を損なうことがないよう認証評価機関間の連携等の配慮が必要である。
認証評価において「認証」されるのは評価機関であって,大学は認証評価機関の評価を受けることが義務づけられているのみであるが,認証評価機関はすべて評価結果で適格性の認定(合格・不合格の判定)を行っているため,評価結果の公表は,社会的にも当該大学にとっても重要な意味を持っている。なお,法科大学院に関しては法令で適格認定を義務づけている。
[認証評価機関]
4年制大学,短期大学の機関別認証評価機関は,それぞれ3機関ある(2016年3月現在)。専門職大学院の認証評価を実施する機関として文部科学大臣から認証されている機関がある分野は法科大学院,ビジネス,会計,助産,公共政策,ファッションビジネス,教職大学院,情報・創造技術・組込み技術・原子力の複合分野,公衆衛生,知的財産,ビューティビジネス,環境・造園,グローバル・コミュニケーションの13分野である(2016年3月現在)。
著者: 前田早苗
参考文献: 前田早苗「第3章第1節 大学評価の類別と目的・意義」『大学職員ナレッジ・スタンダード 大学業務知識編Ⅱ』日本能率協会,2011.
参考文献: 早田幸政・船戸高樹編著『よくわかる大学の認証評価』エイデル研究所,2007.
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報
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