日本大百科全書(ニッポニカ) 「豊羽鉱」の意味・わかりやすい解説
豊羽鉱
とよはこう
toyohaite
銀・鉄および錫(すず)の複硫化物で、基本的には硫スピネル族鉱物に近縁である新鉱物。1991年(平成3)矢島淳吉らによって北海道札幌市豊羽鉱山(閉山)から記載された。なお銅置換体に紅錫鉱(こうしゃくこう)rhodostannite(化学式Cu2FeSn3S8)があり、原分析ではAg(銀):Cu(銅)=65:35となっている。中熱水性鉱脈型多金属鉱床に産し、豊羽鉱山はインジウムの産出で有名である。
共存鉱物は閃亜鉛鉱(せんあえんこう)、黄鉄鉱、磁硫鉄鉱、紅錫鉱、黄錫銀鉱hocartite(Ag2FeSnS4)、ティール鉱teallite(PbSnS2)、ヘルツェンベルグ鉱herzenbergite(SnS)、ベルント鉱berndtite(SnS2)などが確認されている。肉眼で観察できるものが知られていないため、外観的な特徴は記載されていない。命名は原産地による。
[加藤 昭]