日本大百科全書(ニッポニカ) 「インジウム銅鉱」の意味・わかりやすい解説
インジウム銅鉱
いんじうむどうこう
roquesite
インジウム(In)と銅(Cu)の複硫化物。1963年フランスの鉱物学者ピコPaul Picot(1931― )と、フランスの鉱物学者でオルレアンにある地質・鉱山研究施設Bureau de Recherches Géologiques et Minières(BRGM)の鉱物部門長ピエロRoland Pierrot(1930―1998)らによって世界最初のインジウムの独立鉱物として、フランスのカンタル県シャリエCharrierの鉱山から記載された。黄銅鉱のインジウム置換体にあたり、これとともに黄銅鉱系を構成する。なお元素インジウムの発見は1863年で、本鉱の発表はその100周年にあたる。自形未報告。多くの場合、黄銅鉱や斑(はん)銅鉱中の顕微鏡的包有物をなす。気成鉱脈鉱床、高~中温熱水鉱脈鉱床、接触交代鉱床中に産し、インジウムの鉱石鉱物をなす。日本では、兵庫県養父(やぶ)市明延(あけのべ)鉱山(閉山)、同朝来(あさご)市生野(いくの)鉱山(閉山)、北海道札幌(さっぽろ)市豊羽(とよは)鉱山(閉山)などから報告されている。
共存鉱物は斑銅鉱、黄銅鉱、閃(せん)亜鉛鉱、ウィチヘン鉱、エムプレクト鉱、磁鉄鉱、硫砒(りゅうひ)鉄鉱、自然蒼鉛(そうえん)、石英など。微粒のため肉眼的な性質は記載されていないが、おそらく四面銅鉱類似の外観のものと思われる。命名はフランスのクレルモン・フェランClermont-Ferrand大学教授で地質学者であるモーリス・ロクMaurice Roques(1911―1997)による。
[加藤 昭 2015年12月14日]