平安宮の内裏の建物名。内裏の北辺にある。南は常寧殿と渡廊でつながっている。一名,御匣殿(みくしげどの)ともいわれていた。東は宣耀殿,西は登花殿に反(そり)橋でつながっている。《大内裏図考証》では9間4間の東西に長い建物として復元している。《有職抄》では7間四面とあり,7間2間の身舎に,四面に庇をつけたものであった。北面は壇がめぐらしてあり,東西の宣耀,登花両殿との間の北面は瓦垣がつくられていた。平安宮以前の諸宮では貞観殿に相当する建物があったかどうかは確認されていない。平安宮では紫宸殿,仁寿殿,承香殿,常寧殿,貞観殿が南北に並んでいるが,平城宮の内裏では,五つの建物が南北に並んで建てられたことがなく,とくに内裏北辺部分は奈良時代を通じて建物の変遷が数多く行われ,平安宮のような形式になったようすはみとめられない。
執筆者:鬼頭 清明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報