貯木場(読み)ちょぼくじょう(その他表記)timber yard

日本大百科全書(ニッポニカ) 「貯木場」の意味・わかりやすい解説

貯木場
ちょぼくじょう
timber yard
lumberyard

保管施設等を完備した木材集積場。木材集積場は業界内では土場(どば)とよばれる。貯木場には、水中貯木場陸上貯木場の2種類がある。水中貯木場の歴史は古く、江戸時代に河川の河口周辺に材木問屋街が形成されるが、その問屋街に付随して開設された。明治以降も水中貯木場は、虫害、菌害、乾燥防止などの機能をもつことから主要な貯木場として存在してきた。他方、陸上貯木場は、木材運搬が陸送にかわる高度経済成長時代になってから多く開設された。高度経済成長期には列島スケールでの道路交通網の整備が行われ、重量単価の安価な木材も陸送での採算もとれるようになる。それとともに貯木場も水中貯木場から陸上貯木場へ切り替わった。

 この陸上貯木場は、原木市売(いちうり)市場の土場や製材工場の土場などが代表的なものである。原木市売市場の土場は、月に2回から4回開催される市日(いちび)に搬入される原木量を想定して規模が決められている。全国森林組合連合会が2007年(平成19)に行った調査(集出荷販売施設の運営に関する経営管理指導マニュアル)によると、原木市売市場の土場の75%が1ヘクタール以上の規模となっている。

 これに対し、製材工場の土場は、製材用原木の在庫保管場として設けられているため規模が小さい。この製材工場の土場は、縮小ないし廃止される傾向にある。製材工場は、2か月から3か月分程度の木材在庫を必要とされているが、外材との厳しい競合のなかで在庫費の負担を軽減する必要に迫られ、在庫を減らすだけでなく土場を他用途に転用する製材工場が多くなっている。製材工場は、その代用として、原木市売市場などの土場を在庫保管として活用したいとする意向を強めている。原木市売市場の土場の多くは、コンクリート舗装され、積み込み、搬出用の機械などの装備も充実しており、利便性ある貯木場の機能を有している。これまで原木市売市場は、買方(製材業者、木材問屋等)サービスとして市終了後の土場での木材保管(7日程度)を無料で行ってきたが、木材保管を有料化し、製材工場の要望に応じて日数計算で保管料を徴収するケースも生まれている。

[山岸清隆]

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改訂新版 世界大百科事典 「貯木場」の意味・わかりやすい解説

貯木場 (ちょぼくじょう)
timber yard

木材を搬出の途中や鉄道駅・市場または工場などで,一時的あるいは長期にわたって貯材する施設。集材個所や運材の途中で木材を一時的に貯材する施設は,普通〈土場(どば)〉と呼ばれ簡単な設備があればよいが,市場や工場に設ける貯木場では,木材を長期間貯材するとともに木材を乾燥させて品質の向上を図る目的もあるので,施設も完備している。貯木場には陸上貯木場と水中貯木場がある。貯材をするには通常木材を積み重ねるが,木材を縦に平行に積み上げる方法を〈巻立て〉といい,一時的貯材にはこの方法を用いる。長期貯材には木材を格子状に積む。これを〈はえ積み〉といい,陸上で行うものを〈陸(おか)はえ〉,水中に積むものを〈水はえ〉という。巻立てまたははえ積みの高さは5~6m以下が普通で,はえまたは巻立ての間には通路通風などのために1~2mの間隔をおく。貯材量は陸上貯木場では1ha当り4500m3標準とする。水中貯木場では陸上のように高く積み上げることができないから,1ha当り2800m3を標準とする。木材の移動,巻立て,荷役,搬入,搬出などのためには,軌道,送木水路のほかケーブルクレーン,テルファクレーン,動力ウィンチ,チェーンコンベヤ,フォークリフトなどが用いられる。水中貯木場では堀と搬入,搬出に必要な水路が設けられる。
木場
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「貯木場」の意味・わかりやすい解説

貯木場
ちょぼくじょう
timber yard

木材を比較的長期間にわたり,集積,貯蔵する施設を完備した場所。木材の仕分け,貯材,販売などを行う場所であるから広い平坦地が必要とされる。陸上貯木場と水中貯木場の別があり,前者が普通一般であるのに対し,後者は貯木池 (貯材堀) を主体として丸太の搬出入のための水路をもつものをさす。貯木能力は施設の種類,木材の積上げ方法により異なるが,通常,付帯施設,通路を含めて,陸上貯木場が 1haあたり 5000m3,水中貯木場が 3000m3が標準とされている。

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世界大百科事典(旧版)内の貯木場の言及

【木場】より

…木材の集散に便利な地点に設けられる貯木場。江戸時代には多く運材河川の河口付近,または海運によって各地の木材が集中する都市内に成立した。…

※「貯木場」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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