貴所(読み)キショ

デジタル大辞泉 「貴所」の意味・読み・例文・類語

き‐しょ【貴所】

[名]
相手を敬って、その住所をいう語。
貴人居所。貴人の御前
「或る―より仰せを承りて」〈著聞集一九
[代]二人称人代名詞あなたさま。あなた。中世までは尊敬の意を含んでいたが、近世以降は敬意が薄れ、同輩に用いるようになった。
「―はそれほど鈍な故に諸国をめぐる事ぢゃ」〈咄・きのふはけふ・下〉
[類語]けい学兄大兄貴兄賢兄貴殿貴台貴下貴君貴公足下御身貴女

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「貴所」の意味・読み・例文・類語

き‐しょ【貴所】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 貴人の居所。貴人の御前。
      1. [初出の実例]「郷々村々田楽。或被貴所。或参詣神社」(出典:古事談(1212‐15頃)一)
    2. 相手を敬って、その住所をいう語。
  2. [ 2 ] 〘 代名詞詞 〙 対称。中世に発し、主に武士階級以上の男子に用いられた言葉。会話文にも用いられたが、書簡文に多い。貴君。貴下。きしょう。
    1. [初出の実例]「此方へは不承候、悉皆貴所様之御取合歟と存計候」(出典:政基公旅引付‐永正元年(1504)九月二日)
    2. 「貴所(キショ)には何等の見込ありて斯る処置には及ばれたるぞ」(出典:近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉一二)

貴所の語誌

( 1 )[ 二 ]は、「御前」などと同様、場所をさししめす[ 一 ]用法から転じたもの。「ロドリゲス日本大文典」に「敬態で、書き言葉か荘重な話し言葉かに用い」とあるように、もと尊敬の代名詞であったが、近世になると、次第に待遇価値が下がって、同輩に対して用いるようになった。
( 2 )近世には、この語を「きしょう」と長音化して用いた例も見られる。

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