翻訳|gift tax
個人から財産を受け継いだ場合に、その時価に応じて課される税金。これがなければ生前贈与によって相続税の課税逃れが可能となるため、相続税の補完税と位置付けられている。1年間に贈与された財産の合計額から110万円を差し引いた額に対して10~55%の累進税率を適用する。一定の要件を満たせば複数年にわたる贈与が2500万円まで非課税となる「相続時精算課税」を選択できる。
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生きている個人からの贈与により取得した財産に対して課される税金。相続税の補完税の性質をもつため、相続税法のなかで、相続税とともに規定されている。
贈与税は、相続税に対応して二つの類型がある。一つは、財産を贈与する者を納税義務者として課税する制度(贈与者課税)であり、もう一つは、贈与によって財産を取得する者を納税義務者として課税する制度(受贈者課税)である。
日本では、1947年(昭和22)の相続税法改正により贈与税が創設され、贈与者課税制度が採用されていた。しかし、1950年の改正により、贈与税も相続税に吸収され、財産を取得した者に課税する取得税主義が採用された(受贈者課税)。また、一生の間に相続および贈与によって得た財産を総合して課税する一生累積課税方式が導入された。その後1953年の改正により、取得税主義は引き続き採用されたものの、一生累積課税方式が廃止され、相続についてはそのつど、相続税を課し、贈与については受贈者が1暦年内に受けた財産をすべて合算して受贈者に贈与税を課すことになった(暦年課税制度)。2003年(平成15)には、暦年課税制度に加えて、相続税と贈与税を一体化した「相続時精算課税」制度(後述)が創設された(相続税法21条の9以下)。
[野澤正充 2018年1月19日]
〔1〕暦年課税
納税義務者は、贈与によって財産を取得した個人であり、課税標準は、納税義務者が1暦年間に贈与によって取得した財産の価額の合計である(この額は贈与税の課税価格とよばれる)。贈与税の課税価格からは、基礎控除110万円(贈与者の人数にかかわらずこの金額)と、婚姻期間20年以上の夫婦間において居住用不動産の贈与があったときは、2000万円までの配偶者控除が認められる。これらの控除をした残額に10%から55%にわたる累進税率表を適用して税額が算出される。贈与税の税率は、特例贈与財産と一般贈与財産に区分されている。特例贈与財産は、直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において18歳以上の者(子・孫など)へ贈与した財産である。また一般贈与財産は、特例贈与財産に該当しない財産(たとえば兄弟間、夫婦間、親から子への贈与で子が未成年者の場合など)である。相続税の補完的性格を反映して、特例贈与財産・一般贈与財産ともに相続税よりも急激な累進構造を採用している。たとえば、10%の最低税率は、相続税では1000万円までの額に適用されるのに対して、贈与税では両者ともに200万円までの額に対して適用される。また55%の最高税率は、相続税では6億円超の額に対して適用されるの対して、贈与税では特例贈与財産は4500万円超、一般贈与財産は3000万円超の額に対して適用される。受贈者は、財産を取得した年の翌年2月1日から3月15日の間に申告と納税を行わなければならない。
〔2〕相続時精算課税
受贈者が贈与者の推定相続人(18歳以上の子と孫)であり、かつ、贈与者が60歳以上の者である場合に適用され、贈与税と相続税を通じた納税を可能とする制度である。その控除額は2500万円(累積)で、控除額に達するまで複数年にわたり利用できる。ただし、年110万円の基礎控除は使えない。そして、控除額を超える贈与を受けた場合は、超える金額について贈与税を納付し(税率は一律20%)、贈与者が死亡したとき(相続時)に、それまでの贈与財産が相続財産へ組み込まれたうえで納付した贈与税は相続税で精算される。贈与者は、この相続時精算課税制度と従来の暦年課税制度とのいずれかを申告時点で選択できるが、一度、相続時精算課税制度を選択したら暦年課税制度に戻ることができなくなる。相続時精算課税の特別控除を受けるためには、納税額の有無にかかわらず、財産を取得した年の翌年2月1日から3月15日の間に申告を行わなければならない。
贈与財産には、財産権の対象となるすべての物および権利が含まれる。ただし、(1)法人からの贈与により取得した財産、(2)夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費にあてるために取得した財産で通常必要と認められるもの、(3)宗教・慈善・学術など公益を目的とする事業を行う者が取得した財産で、その公益を目的とする事業に使われることが確実なもの、(4)地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人またはその人を扶養する人が心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利、(5)個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物または見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの、(6)直系尊属から一括贈与を受けた教育資金や結婚・子育て資金のうち一定の要件を満たすものとして、贈与税の課税価格に算入されなかったもの、などは非課税財産として贈与税の課税対象から除外される。また、法律的には贈与によって取得した財産とはいえないが、実質的には贈与によって取得した財産と同じである財産(自分が保険料を負担していない生命保険金、債務の免除などによる利益、信託受益権など)は、「みなし贈与財産」として贈与税がかかる。
[野澤正充 2022年4月19日]
贈与税は特殊な財産税の一つで,贈与による財産の移転に対して課税される。被相続人の死亡にともなう相続または遺贈により財産を取得した者に対する相続税は多くの国で採用されているが,この相続税は,もし被相続人が生前に財産を分割して徐々に贈与した場合には徴収できないから,この抜け道を防ぐため同時に贈与税が設けられている。このように贈与税の目的は主として生前の財産の分割による相続税のひずみを防ぐことであるから相続税の補完税ともよばれ,相続税と密接不可分の関係にあり,相続税法(1950公布)により規定されている。贈与税の納税義務者は贈与により財産を取得した者である。課税価格は,贈与によりその年中に取得した財産の価額の合計額である。この課税価格から一定額の基礎控除(1975年以降60万円)をしたあとの額に対して超過累進税率を掛けて贈与税額が算出される。相続税の補完税としての性格がよく表れているのは,ある一定期間(3年とか5年)以内に同一人物から贈与があった場合には,その期間内に以前贈与された額と合計して贈与税額を算出し,すでに課された贈与税相当額をその贈与税額から控除した額をもって納付すべき贈与税額とする制度である。贈与税率は10%から70%まできわめて急速な累進税率構造をとっているから,相続税を逃れる目的で生前に贈与する意図を阻止しようという目的が達成されるのである。
執筆者:林 正寿
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(浦野広明 立正大学教授・税理士 / 2007年)
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…いずれの場合も,その額はかなり低く,現実には,離婚後の妻の扶養という機能はほとんど果たしていない。 財産分与は経済的効果からみるとかなり贈与に近いが,法律上の贈与には当たらないので,原則として贈与税は課されない。ただし,分与財産の額が過当であると認められる場合の過当である部分は,贈与によって取得した財産として課税される(相続税法基本通達62条)とされている。…
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