起泡分離(読み)きほうぶんり(その他表記)adsorptive bubble separation methods

改訂新版 世界大百科事典 「起泡分離」の意味・わかりやすい解説

起泡分離 (きほうぶんり)
adsorptive bubble separation methods

液中に分散している粒子または溶存物質の気液界面に対する吸着の強さの違いを利用して分離を行う方法の総称。起泡分離法は,泡沫(ほうまつ)の捕集効果を利用する泡沫分離法と,気泡のみを導入する気泡分離法に分類されるが,前者のほうが一般的である。また泡沫分離法は固体粒子の分離と溶存物質の分離とに分けられ,固体粒子を対象としたものでは浮遊選鉱法が古くから鉱物分別に広く利用されている。300μm以下の固体粒子を懸濁させた溶液に気泡を吹き込みかくはんすると,表面が水にぬれにくい性質をもつ粒子は気泡表面に付着し,気泡とともに上昇し泡沫層として取り除かれる。また溶存物質であっても,界面活性をもつ物質は気液界面へ容易に吸着するため,固体粒子と同様の分離が可能である。界面活性のない金属イオンなどの除去については捕集剤が必要であり,金属イオンは捕集剤と結合することにより,見掛け上,界面活性をもつようになり気液界面への吸着が起こる。以上の溶存物質の取扱いをまとめて狭義の起泡分離と呼ぶ場合もある。起泡分離の特徴は,他の分離操作に比べ,熱や電気エネルギーをさほど必要としない省エネルギー操作が可能な点である。起泡分離の実用例には下水廃水処理古紙からの脱インキなどがあり,今後,資源の有効利用を目的とした回収技術や,公害問題にからむ有害成分の除去の分野での応用が期待されている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「起泡分離」の意味・わかりやすい解説

起泡分離
きほうぶんり
adsorptive bubble separation

溶液中に気体を吹き込み分散させ、発生した気泡の表面に溶液中の溶質または分散粒子を吸着または付着させて分離する方法をいう。起泡分離は古くから浮遊選鉱などとして用いられてきたが、近年イオン、分子コロイドなどの分離にも応用されるようになり、ドイツのカルガーB. L. Kargerらが用語の統一を提案した(1967)。すなわち、液体中に気泡が分散している気泡層とその上部に形成される泡沫(ほうまつ)層の両方を利用して気泡層中の気泡表面および泡沫層中の泡沫表面に溶液中の界面活性物質を吸着または付着させて溶液から分離する操作を泡沫分離foam separationとよび、泡沫層を形成させず気泡層のみを用い気泡層中を上昇する気泡の表面に液中の溶質や粒子を吸着または付着させて液と分離する操作を気泡分離nonfoaming adsorptive bubble separationとよんでいる。起泡分離は近年廃水処理に用いられる例が多い。

[早川豊彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「起泡分離」の意味・わかりやすい解説

起泡分離
きほうぶんり
foam separation

液中に溶質や微粒子が含まれている場合,液中の気泡表面にこれらの溶質や微粒子が吸着されやすいことを利用して分離する操作をいう。一般に気泡の界面が活性であることは昔から知られていた。起泡分離は泡沫分離と気泡分離に分類できるともいわれている。泡沫分離は液中に吹込まれた気泡が泡沫層を形成しこの部分がおもな働きをするものをいい,浮遊選鉱はこれに属する。気泡形成の方法としては,直接液中に気泡を吹込む方法と,高圧下で気体を溶解させておき,低圧下に解放されたとき気泡を発生させる方法とがある。この操作は排水中の油分,微粒子の除去にもよく用いられる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android