ドイツの作家ヘルマン・ヘッセの長編小説。1906年刊。貧しい家庭の主人公ハンスは、父親や教師の督励で難関の試験に合格して神学校に入るが、やがてノイローゼで退学、心身ともに傷つき、川で哀れな死を遂げる。この退学の件は作者自身の少年時代の体験に符合し、そのときから15年後の29歳でようやく客観視しえたことになり、当時の学校制度や、それと結び付く過酷な圧制への激しい告発が読み取れる。現代にも通じる教育問題を扱ったものとして、ドイツ文学のなかでも、わが国の若い読者にもっとも親しまれてきた小説の一つ。
[藤井啓行]
『『車輪の下』(高橋健二訳・新潮文庫/実吉捷郎訳・岩波文庫/秋山英夫訳・講談社文庫)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…彼の出世作は《ペーター・カーメンツィント》(1904,邦訳名《青春彷徨》《郷愁》)で,魂のロマン的な憧憬とみずみずしい自然感情が自然主義文学に飽きてきた当時の読者に迎えられた。作家として独立し結婚(1904),新居をボーデン湖畔の小村ガイエンホーフェンに構えて創作に専念し,《車輪の下》(1906),《ゲルトルート》(1910,邦訳名《春の嵐》)刊行。34歳のときアジアへの旅に出,帰国後スイスのベルンに移住。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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