狭義には、日清(にっしん)戦争の戦費にあてるため1894~95年(明治27~28)に発行された総額1億2500万円に上る公債をさす場合もあるが、一般的には軍備費または戦費をまかなうために発行される公債をいう。
資本主義の自由主義的段階においては、軍事費は非生産的経費であり、さらに公債は租税に比して資本蓄積を阻害するとして、軍事公債は否定されることが多かった。アダム・スミスが、公債による戦費調達は租税による場合に比べて国民の抵抗が少ないから、これを許せば為政者が安易に戦争をやりかねないとして、軍事公債に反対したことはよく知られている。しかし、公債は戦費を即時的に調達できるし、勝利時には賠償金などでこれを返済できることもあって、すべての大戦争は事実上軍事公債でまかなわれて現在に至っている。また軍備費においても、とくに1929年の大恐慌以後には、公債を財源とする軍備拡充が有効需要を刺激する手段と考えられるようになり、不況克服という名目で軍事公債が発行されることが多かった。
わが国でも、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦(日中戦争を含む)時には、臨時軍事費特別会計が設置されたが、その財源には公債、借入金、現地調達資金があてられ、とくに公債の占める割合は大きく、これらの戦争は軍事公債でまかなわれたといっても過言ではない。かくて第二次大戦まで、わが国には、戦争は借金でやってもかならずもうかるという認識が存在していた。
[一杉哲也]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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