日本大百科全書(ニッポニカ) 「輝安銅鉱」の意味・わかりやすい解説
輝安銅鉱
きあんどうこう
chalcostibite
銅(Cu)とアンチモン(Sb)の硫塩鉱物でもっとも簡単な化学組成をもつものの一つ。硫安銅鉱という和名もある。熱水溶液からの直接沈殿のほか、既存の銅鉱床に後のアンチモン鉱化作用が重複して発生した場合の産物として生成されることもある点で有名である。自形はc軸方向に伸び、b軸方向にやや扁平(へんぺい)な斜方(直方)柱状。日本では熱水鉱脈あるいは交代作用を伴うアンチモン鉱床や前記の成因の含銅硫化鉄鉱鉱床に産する。前者の直接沈殿によるものの例としては、愛知県北設楽(きたしたら)郡設楽町津具(つぐ)鉱山(閉山)、後者のアンチモン鉱化作用の重複によるものの例としては愛媛県伊予(いよ)郡砥部(とべ)町優量(ゆうりょう)鉱山(閉山)がある。
共存鉱物は前者では輝安鉱、毛鉱、安四面銅鉱、白雲母(うんも)、石英、重晶石、菱(りょう)鉄鉱など、後者では黄鉄鉱、黄銅鉱、輝安鉱など。同定は板状に発達した面に平行な劈開(へきかい)があること、もろいことによる。錆(さ)びてくると、わずかに緑色がかった色調が出てくることがあるが、つねに見られるとは限らない。後者の産状の場合は共存関係が手掛りとなる。英名はギリシア語で化学組成の銅とアンチモンを意味する語の合成による。
[加藤 昭 2016年3月18日]