染色された各種の繊維製品や,顔料で着色された印刷インキ,塗料,プラスチック製品などは,その製造工程中にも,また使用している間にも,日光,風雨,化学薬品,洗濯,汗,摩擦,真水や海水中の浸漬などの外的作用により変色または退色する。このような色の変化は本質的には使用した染料や顔料が外的作用を受けて分解などの化学変化を起こすことに起因する。羊毛,ナイロン,ポリプロピレンに染着している染料は還元退色しやすく,木綿,ポリエステル,ポリアクリロニトリルに染着している染料は酸化退色しやすい。退色は染着状態によっても大きく影響され,染着分子が会合しているほど退色しにくい。染料や顔料にはその化学構造に基づいた外的条件に対する安定さがあり,それを堅牢度という。染色堅牢度の試験法は日本工業規格(JIS L 0801)に規定されている。顔料の場合も染料の試験方法に準じて行うが,有機顔料を白色無機顔料で希釈すると光による退色が著しく促進されることがある。
執筆者:新井 吉衞
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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