ポリアクリロニトリル(読み)ぽりあくりろにとりる(英語表記)polyacrylonitrile

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポリアクリロニトリル」の意味・わかりやすい解説

ポリアクリロニトリル
ぽりあくりろにとりる
polyacrylonitrile

アクリロニトリルCH2=CHCNの重合体ポリマー)。PAN(パン)と略称される。単量体モノマー)のアクリロニトリルはアクリル系の合成繊維や、NBRアクリロニトリル・ブタジエンゴム)系の合成ゴムの主原料であり、プラスチックとしての利用にはブタジエンスチレンとの三元共重合物としてのABS樹脂がある。

 アクリロニトリルは、以前はアセチレンにシアン化水素酸(青酸)を反応させて製造されていたが、現在ではプロピレンを原料として、青酸のような有害ガスを使わないソハイオ(sohio)法が採用されている。反応式は次のようになる。


ソハイオ法によってアクリロニトリルは、白色ないし黄色の柔らかい不透明な粉末あるいは塊として得られる。単独に用いられることは少なく、いろいろな単量体と共重合させたものが利用されている。

 現在、注目されている炭素繊維は、PAN系のものが主流である。ポリアクリロニトリル系合成繊維(アクリル繊維)は、ポリアミド系(ナイロン)、ポリエステル系とともに、合成繊維の主力を占めている。

垣内 弘]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ポリアクリロニトリル」の意味・わかりやすい解説

ポリアクリロニトリル
polyacrylonitrile

アクリロニトリルの重合体で,アクリル繊維の主要成分。重合はラジカル重合により,通常水溶液重合または乳化重合で行われる。白色または黄色の固体で軟化点が高く,加熱すると溶融することなく 300℃以上で分解する。他のビニル単量体との共重合体はアクリル繊維として広く用いられ,ABS樹脂などの成分として使用されるほか,炭素繊維の原料としても利用されている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報