一般には「五目並べ」として親しまれ、五丁並べ、五連(ごれん)、五つ石、ともいわれていた。「五目並べ」にルールと対局手合いを確立し整備したのが近代連珠である。
従来、連珠の最古の史料とされていたのは『漢書(かんじょ)』(紀元前2世紀)に記載されている「吾丘寿王字子贛趙(こうちょう)人也、年少以善格五召待詔」の一節で、ここにいう格五(かくご)が五目並べのことであり、奈良時代に日本に伝わったとされていた。
また、日本における最古の史料は、「持統(じとう)天皇の三年(689)、双六(すごろく)の禁ぜらるるや此(こ)の技の流行を致(いた)せるなり」(1922、藪上昌美(やぶがみまさみ)発表)といわれていたが、『日本書紀』によると「禁断双六」とあるだけで、「格五の技流行を致せるなり」に該当するところはまったくなく、推察によって記述されたとみられる。
最近の調査・研究によると、囲碁の余技として生まれ、これが、京都・二条家出入り商人で松原柳馬場に住んだ鬢付(びんつけ)油商、第10代桑名屋武右衛門(ぶえもん)(?―1801)によって確立されたといわれる。桑名家では「五つ石」と称されており、同家では代々打ち継がれ、第13代武右衛門(1831―1900)が著した『五石定蹟集(いつついしじょうせきしゅう)』2刊(1856)が最古の連珠書として現存している。
なお、安政(あんせい)年間(1854~60)の津藩の漢学者、土井聱牙(ごうが)(1817―80)はこの技に熱中し、1858年(安政5)に『格伍新譜』を著しているが、この序文によると、「漢書に現れる格五は我々のやっている五目並べであろうと思われるので、我々のたしなんでいる五目並べを格五と命名する」と記している。これによって、その後、五目並べ=格五と誤解されていった。
連珠(当時は聯珠(れんじゅ))と命名されたのは1899年(明治32)で、黒岩涙香(るいこう)(号は高山互楽・第一世名人)が当時の新聞『萬朝報(よろずちょうほう)』に発表したのが始まりで、1906年東京聯珠社が創立された。現在は、社団法人日本連珠社が名人戦(2008年現在、第46期)や各種の棋戦を実施し、月刊『連珠世界』の発行、段位の認定、国際普及その他の活動を行っている。
連珠のルールは、幾多の変遷を経て、後述のルールに一本化されているが、このようなルールの論議は、すでに幕末のころから始まっていた。現在、世界各国で五目並べが親しまれていることが確認されているが、これは日本人外交官や商社マン、旅行者などが、その時々の慰みに興じたものが、自然に定着したものと考えられる。
各国の五目並べの呼び名はまちまちで、スウェーデンではルファチャック、フランスではモーピオン、ロシアではクレスチキ・ノーリキ、ハンガリーではアメーバー、中国では五子棋(ウーツーチ)、韓国では五目(オモク)、アメリカではペンテ、そして、デンマークでは日本名のゴモクである。これらの多くが「連珠」の呼び名に移行している。1982年12月スウェーデンで「スウェーデン国際連珠大会」、翌年7月「日ス親善連珠大会」が箱根と京都で催され、交換交流は88年まで続いた。また、1983年4月から、日本、ソ連、スウェーデンの各国3チーム(1チーム4名)による「国別連珠対抗戦」(郵便対局)が実施された。1988年8月に、日本、スウェーデン、ソ連、オランダの4か国で連珠国際連盟(略称RIF、本部スウェーデン)が設立された。現在の加盟国は、日本、スウェーデン、フィンランド、チェコ、中国、韓国、カナダと、旧ソ連を構成していたロシア、エストニア、アルメニア、ウクライナ、ウズベキスタン、アゼルバイジャン、および台湾の14の国と地域で、RIFが発行する『RENJU WORLD』は35か国で愛読されている。
1989年8月、連珠発祥の地とされる京都で「第1回連珠世界選手権戦」が催され、以後2年ごとに、ソ連(1991年に開催、その直後にソ連が解体)、スウェーデン、エストニア、ロシア、中国などの各地で開催され、2007年はロシアのチュメニで開催された。また1996年から「ユース世界選手権」「チーム世界選手権」、97年から「女流世界選手権」がそれぞれ2年ごとに催されている。また、インターネットによる国際対局が盛んに行われるようになり、国境を越えた対局が日常的に繰り広げられている。
[早川嘉美]
連珠のルールは正しくは珠規(しゅき)とよばれ、次のとおりである。
(1)競技盤は、縦、横それぞれ15本の専用の盤を用い、石は黒と白を使用する。
(2)黒を先手とし、盤の中央より交互に打ち、黒、白どちらかが、縦、横、斜めのいずれかに、先に「五連」をつくったほうを勝ちとする。
(3)黒は「五連」になるまでに「三々」「四々」「長連」を打つことを禁じ(禁手)、これを犯したときは負けとする。ただし、白は、黒が禁手を打ったときは黒に宣言しなければならず、これを怠り、次の着手をしたときは、黒の禁手は解消され、競技は続行する。
(4)白にはいっさいの禁手がなく、白の「長連」は白勝ちとする。
(5)白6以降の着手は放棄することができる。
(6)引き分けの成立は次のとおりとする。(a)どちらか一方が引き分けを提案し、相手がこれを受け入れたとき。(b)黒白が連続して着手を放棄したとき。
競技方法は、段級位や大会ごとに主催者が決定するが、おおむね次の3種から構成されている。
(1)自由打ち 先手も後手も珠規以外になんの制限もなく、競技する方法である。
(2)珠型交替打ち 黒3までの打ち方に26種の基本珠型を定め、このなかから黒(仮先)が選んで3までを並べる。このあと白(仮後)がそのまま白をもつか、黒をとるか選ぶことができる。これで黒・白が確定し、白4から交互に打つ。これは黒の打ち出し方を制限することによって、先・後のバランスを保とうとしている。
(3)五珠二題打ち 主として有段者の先手に使われる打ち方で、黒3までについては珠型交替打ちにより打ち進め、次の白の4は自由。黒5は自己の打ちたいところ2か所を示し、白がどちらか一方を選択して打ち進める。現在の公式対局は、名人戦、世界選手権戦を含め、国内外を問わず、すべて「珠型交替、五珠二題打ち」で行われている。
[早川嘉美]
『早川嘉美著『連珠(五目ならべ)入門』(1977・高橋書店)』▽『坂田吾朗著『連珠必勝法』(1977・高橋書店)』▽『坂田吾朗著『連珠の勝ち方入門』(1984・日本文芸社)』▽『斉藤秀一著『連珠ゲーム 五珠二カ所打ち総論』(1994・自費出版)』▽『坂田吾朗著『連珠』(1996・毎日コミュニケーションズ)』▽『西村敏雄著『連珠必勝法 二手で勝つ』(2000・熊本日日新聞情報文化センター)』
碁石を連珠盤(15道盤)の中央(天元)から黒(先手),白(後手)の順に交互に打って,縦,横,斜めいずれかの方向に先に五連に達した方を勝者とする室内遊戯。
中国で〈格五〉と呼ばれて漢代以前から行われていたといわれるが,日本における歴史は明らかではない。古くは上流婦人の遊戯であり,下って江戸時代には他の芸能とともに大衆化し,幕末津藩の儒者土井聱牙(ごうが)の《格五新譜》などの書物も出た。1899年《万朝報》を主宰する黒岩涙香(連珠では高山互楽と号し,初世名人を追贈された)が当時の〈格五〉〈五目並べ〉〈五石〉〈五連〉などの名称を統一して〈聯珠〉とし高橋清致による図入り〈聯珠必勝法〉を連載した。1906年には東京聯珠社を創設,同時に段制(当時は九段制)を設け,また強弱の手合割り(一種のハンディキャップ)も制定した。当時は碁盤を用い,基本珠形を黒の最初の2珠の並び方で,小げいまを〈桂〉,一間飛びを〈間〉,2連を〈連〉として,各7珠形を定めた。28年3世名人高木楽山が珠形を〈直接かかり〉(黒1に対し直線上に白2とかかる),〈間接かかり〉(黒1に対し斜めに白2とかかる)への応手各12珠形に再編成し,36年に専用の〈十五道盤〉を制定した。やがて小派乱立の状態にあった連珠界もしだいに統合されて,56年社団法人〈日本連珠社〉となり,名人戦ほか各種競技会などを行い,機関誌《連珠世界》(月刊)を発行している。
五連を達成するためには,同一焦点に,(1)〈三三〉 活三連(三または飛び三)が二つ,(2)〈四四〉 四連(四または飛び四)が二つ,(3)〈四三〉 活三連と四連のいずれかを作ればよい。しかし,連珠では先手が絶対有利で,囲碁のこみ出し,将棋の駒落しに相当するハンディキャップをつけることができないので,先手の勝ち形は〈四三〉だけに限定し,三三,四四,長連(一列に6珠以上ならべること)を禁絶手とし,先手が打っても,打たされても負けとなる。ただし,五連になった最後の着珠のときに生じた三三,四四,長連は禁手にはならない。また,後手はいっさいの制約がなく,先手に禁絶手を打たせると〈勝ち〉となる。段級差のバランスを保つためには〈珠形〉選択の手合割りがあり,また,有段者には第五珠(黒の3珠目)を2ヵ所選び,後手がその中の1ヵ所を指定する〈五珠二題打〉がある。先・後各75珠を持ち,勝敗が決しないときは〈満局〉といい,引分けとする。なお,19道盤と碁石を用い,先手の〈四四〉を禁じない〈旧連珠〉,いわゆる〈五目並べ〉といって,十五道盤を用い自分からの〈三三〉を禁じる以外の制約を設けない遊び方もある。
執筆者:三上 繁太郎
中国,漢から六朝(りくちよう)時代に行われた美文体の宮廷文学の一種。諸物にちなむ美辞麗句を,真珠を連ねるように重ね,その間に風刺の意を含ませたもの。多く4句を重ねる形,あるいは四六駢儷(べんれい)の形をとり,短い凝縮した句を多次元的に重ねて,美しく朗誦できるようにくふうする。漢の揚雄に始まるとされ,〈賦〉の応用形態であるが,完全に残る作例は,《文選》に載せる晋の陸機の〈演連珠〉50首のみ。《芸文類聚(げいもんるいじゆう)》巻57連珠に,漢から梁までの連珠作品の一部分を収録している。
執筆者:鈴木 修次
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