日本大百科全書(ニッポニカ) 「連邦危機管理庁」の意味・わかりやすい解説
連邦危機管理庁
れんぽうききかんりちょう
Federal Emergency Management Agency
略称FEMA(フィーマ)。1979年に設立された、アメリカ大統領直属の緊急事態に対応するための政府機関。局長は閣議に出席する資格をもつ閣僚待遇で、大規模の火災、地震、竜巻、ハリケーン、地すべり、環境被害、テロ、ハイジャック、そのほか国民の生命・財産に影響を及ぼすおそれのある災害(またはその予防)に関して対処する。局長は大統領の指示により、ワシントンにある28の関係ある省・部局とアメリカ赤十字、ボランティア団体を指揮下に収めて事態の収拾、救済、援助にあたり、必要に応じて全国食糧保険機構(NFIA)その他の機関とも協力して調整にあたる。
近年の実例では、このFEMA設立の契機となったオレゴン州ポートランド東のセント・へレンズ火山の大爆発による被害、1994年のカリフォルニア州ロサンゼルス北方の大地震、2001年のアメリカ同時多発テロによるニューヨーク世界貿易センタービル崩壊に際しての緊急出動などが記憶に新しい。FEMAはワシントンの本部と主要な州の10支局とをあわせて2600人の職員を擁し、15億ドルの基金を常備している。そればかりでなくFEMAは、あらゆる災害を援助または事前に予防するための「より安全な未来を目ざすパートナーシップ」という当面2007年までの戦略目標をたてて、そのための調査と準備を整えつつある。
日本でFEMAが注目されたのは、1995年(平成7)1月の阪神・淡路(あわじ)大震災に際して政府の対応がひどく立ち後れた反省からである。いわゆる「危機管理」が問題となり、首相官邸内に内閣情報集約センターが設けられ、ようやく98年4月になって次官待遇の内閣危機管理監(初代管理監は、元警視総監安藤忠夫(あんどうただお)、1935― )が設けられた。しかし、管理監が指揮できるのは管理室の職員33人だけで、あらかじめ予算も割当てられておらず、各省庁の縦割り行政を調整して緊急時に対応できるかどうか、早くも疑問視されている。
[陸井三郎]