デジタル大辞泉 「遊園地」の意味・読み・例文・類語
ゆうえん‐ち〔イウヱン‐〕【遊園地】
[補説]日本では、明治44年(1911)開園の宝塚新温泉(後の宝塚ファミリーランド)が最初とされる。
[類語]公園・パーク
囲いこまれ管理された自然の中に,遊戯機械・施設,食堂,売店などを配し,各種の催事やアトラクションを提供する屋外型娯楽施設。プール,スケート場などのスポーツ施設も重要な要素であり,また,動・植物園,水族館,あるいは浴場・宴会を中心とするヘルスセンターを併設することも多い。猛獣の放飼い,海洋動物のショーを中心とするサファリ・パーク,マリン・パークも含まれる。有料で営利を目的とする点で,自然公園,都市公園,児童公園などと区別され,また,博物館法による施設とも区別されるが,遊戯機械を設置している動・植物園など広義には同種のものとみなされるものもある。
起原は,17世紀フランスを中心にヨーロッパに広まったプレジャー・ガーデンに求められる。それらはもともとは公共の公園だったが,ロンドンに私設のものが現れ,1661年に開設されたボクスホール・ガーデンズVauxhall-Gardensが有名である。宿屋・居酒屋の付属施設であるが,広大な敷地をもち,豊かな樹木を整然としきる遊歩道,音楽を演奏する豪華な3層のスタンド,飲食店,室内ゲームや見世物が人気を呼び,多い日には1万人の客を集めた。18世紀末には,パリやベルリンにもボクスホールを名のる遊園地が出現している。1843年コペンハーゲンに開設されたティボリは,プレジャー・ガーデンの系統の遊園地で,市民が株主となって運営され,現在もヨーロッパを代表する遊園地の一つである。1873年のウィーン万国博覧会には,初期の観覧車,回転木馬,滑り台,ファンハウス,力試し機,そしてジェットコースターの祖である〈ロシアの山〉が展示され,遊園地に大型遊戯機械が導入されるきっかけを与えた。会場のプラーター公園は,映画《第三の男》で有名になった大観覧車がある遊園地となっている。ヨーロッパには,祭りなどをめぐり歩く移動遊園地の伝統があり,現在もフランスを中心に根強く残っている。
アメリカでは,マンハッタン島にあった広大な〈ジョーズの森〉,ロング・アイランドの海水浴場コニー・アイランドがしだいに遊園地化し,とくに後者は近代遊園地の祖というべき存在で,1882年に象をかたどった巨大なホテル〈ザ・エレファント〉が建造されて性格を一変した。1875年のフィラデルフィア万国博覧会の〈ソウヤー展望台〉が移設され,95年にはシーライオンパークとスティプルチースパークが開設された。スリルを求める大型遊戯機械を中心とするスタイルは,コニー・アイランドで確立されたとみてよい。1955年カリフォルニアに誕生したディズニーランドは,ウォルト・ディズニーが,おとなも子どももいっしょに楽しめる魔法の王国を意図したテーマ・パークであり,テーマに沿って自然もつくりあげる徹底ぶりと,建物の中で電子制御された人形が演ずるアトラクションを楽しむダークライドを中心にしたことで,世界中に大きな影響を及ぼした。年間1000万人を数える入場者の80%はおとなであるという。71年に開設されたフロリダのディズニーワールドは,そのテーマ・パークを一部に含む滞在型リゾートである。
日本では祭りや行楽の際の寺社の境内や名所,市などに源流が求められ,浅草寺の境内であった浅草公園の花屋敷が最も早く遊園地的性格を帯びた。明治末には動物園,回転木馬,芝居の名場面を見せる等身大の人形などで人気を集めた。一方,見世物などを集めた浅草六区にも,パノラマ館,回転木馬,観覧車,そして1910年アメリカ式遊園地ルナパークが登場し,全体が一つの遊園地的空間となった。そのころ関西でいくつかの遊園地が開業しているが,行楽地,庭園の域を出ないもので,日本の近代型遊園地の祖は,温泉・レビューを主体に11年開設された宝塚新温泉(のちの宝塚ファミリーランド。2003年閉園)である。22年アメリカ製,ドイツ製の大小遊戯機械を導入し,その後の方向に大きな刺激を与えている。各地に遊園地がつくられたのは,主として第2次大戦後のことである。多くは電鉄会社の経営で,それも日本の特色の一つとなっている。遊園地の代表的機種とされるものは,観覧車,ジェットコースター,メリーゴーラウンド(回転木馬)であるが,1975年コークスクリューが導入されて以来,ループなどいわゆる〈絶叫マシン〉と呼ばれる機種が相ついで開発され人気を集める時代となった。また,ゴーカートやお化け屋敷も相変わらず人気が高く,ダークライドも増加している。しかし,83年4月にオープンした東京ディズニーランドは,ディズニー初の海外進出として注目され,新型機種重視の傾向に拍車をかけることになった。
日本の代表的遊園地には,前述のほかに関東の豊島園(1926),後楽園ゆうえんち(1955),よみうりランド(1964),横浜ドリームランド(1964-2002),富士急ハイランド(1961),関西のひらかたパーク(1910),あやめ池遊園地(1926-2004),甲子園阪神パーク(1950-2003),エキスポランド(1972),奈良ドリームランド(1961-2006)などがある。
執筆者:中藤 保則
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
遊びや娯楽など、レクリエーションの目的で形成された地域。公共施設と商業施設がある。元来子供の遊び場で、家庭の周辺にあった児童公園的なものであったが、居住空間の狭隘(きょうあい)さ、都市域における遊び場の喪失、レジャーの多様化などの要因から、各種の遊戯施設を整えた商業施設から、スポーツ施設・文化施設なども併設した総合レジャーランドまでを総称するようになった。
日本の遊園地は1911年(明治44)箕面有馬(みのおありま)電気軌道(現、阪急電鉄)による宝塚新温泉(のち宝塚ファミリーランド。2003年閉園)の建設が最初である。これは私鉄が沿線住民のために設けた付帯事業であり、沿線住民の増加や、利用客による乗客増加を図ったものであった。1925年(大正14)には東京の目黒蒲田(かまた)電鉄(現、東急電鉄)により多摩川園(1979年閉園)が、1926年には武蔵野(むさしの)鉄道(現、西武鉄道)により豊島(としま)園(1927年全面開園、2020年閉園)などがつくられた。しかし第二次世界大戦後は、これが付帯施設ではなく、独立した施設となり、1955年(昭和30)に後楽園ゆうえんち(現、東京ドームシティアトラクションズ)が、都市型の機械化した遊戯施設をもつ遊園地として登場し、さらに都市化の進展により、向ヶ丘(むこうがおか)遊園(1927年開園、2002年閉園)、奈良ドリームランド(1961年開園、2006年閉園)、よみうりランド(1964年開園)、横浜ドリームランド(1964年開園、2002年閉園)など郊外住宅地域立地型が生じ、さらに観光地に立地したレジャーランドが自然環境立地型として発達するようになった。
内容的にみると、子供中心の生活の遊び場的な小規模の手動施設が、第二次世界大戦後はストレス解消の青少年中心から大人を含めた施設へと展開していく。一つはスリルを追求したカート(ゴーカート)、ジェットコースターなどで、近年では宙返りや垂直に落下するものなどが大型遊戯施設の代表的なものとなった。サスペンスを求める型も、古いお化け屋敷的なもののほか、映像を観たり音声を聴いたりして恐怖を味わうなど新しいタイプの施設が現れた。またディズニーランドに代表される、ファンタジックな世界に誘うものは、もっとも基本的な要素であろう。また各種のゲーム機器も古くから人気が高い。
このような遊戯施設に加え、多くの他の要素を加味した総合施設も発達している。その一つは、富士急ハイランド(1961年富士五湖国際スケートセンターとして開業)などにみられるもので、スポーツ施設併設型であり、スケート、テニスなどを中心にして、ホテル、ペンションなどの宿泊施設が併設されているものも多い。二番目は各地のサファリパークなどにみられる、動物園や植物園を中心とするものである。これは自然環境立地型に多く、美しい自然の中で、植物や動物の生態に接しながら楽しむものである。三番目は郷土館的な文化施設併設型で、郷土の民芸や産業に接することができる。四番目は多摩テック(1961年開業、2009年閉業)にみられるような自動車、あるいは鉄道などに接するとともに体験運転するというものであろう。このように、遊戯施設を中心としてスポーツ施設・文化施設を併設したもの、または逆に遊戯施設が従的な施設となったものなどがある。
昭和50年代以降には「憩いの村」など公営施設、観光地にみられる「ミニ共和国」など多くの形態が生じ、レジャーの多様化に伴って施設も多様化している。しかし、反面、谷津(やつ)遊園(1922年開園、1982年閉園)、二子玉川(ふたこたまがわ)園(1922年二子児童園として開園、1985年閉園)など、廃止された古い有名な施設もある。
問題点としては、経営面から考えると、カート、ジェットコースターなど、スリルを追う施設が急激にエスカレートしているが、これらはまた危険度も高く、安全の面から十分の注意が必要である。利用者の側からも安全の面に留意するとともに、利用のルールを守り、またギャンブル的なゲームなども多い点、非行問題など、青少年の利用に対する大人や家族の配慮も望まれる。
[徳久球雄]
『橋爪紳也著『日本の遊園地』(講談社現代新書)』
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