道中記(読み)ドウチュウキ

デジタル大辞泉 「道中記」の意味・読み・例文・類語

どうちゅう‐き〔ダウチユウ‐〕【道中記】

旅行中の日記記録紀行
江戸時代に作られた旅行案内書物街道筋宿場名所・旧跡・里程などを記したもの。

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精選版 日本国語大辞典 「道中記」の意味・読み・例文・類語

どうちゅう‐きダウチュウ‥【道中記】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 旅の日記。紀行文
    1. [初出の実例]「名物をくふが無筆の道中記」(出典:雑俳・柳多留拾遺(1801)巻七)
  3. 江戸時代、交通発達とともに作られた旅行案内記。道中の宿場、里数名所旧跡旅宿などを記して旅人の参考に供するもの。道中づけの本。道中づけ。
    1. [初出の実例]「其外新板の道中記(ダウチウキ)、万(よろづ)よし書付のある丸薬二包」(出典浮世草子好色二代男(1684)一)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「道中記」の意味・わかりやすい解説

道中記
どうちゅうき

旅行中の行動・見聞を記した紀行文や、旅行の案内記などをさす。奈良時代では、中国各地の聖跡を巡礼した僧侶(そうりょ)、円仁(えんにん)による『入唐求法巡礼行記(にっとうぐほうじゅんれいぎょうき)』などがあげられる。本書は838年(承和5)から約10年ほどに及ぶ在唐時のもので、唐の政治、社会、風俗などを記録した紀行文である。これは漢文体で書かれているが、平安時代には、女手といわれた仮名文によって書かれた『土佐日記』(935ころ成立)等の旅行記が現れた。本書は紀貫之(きのつらゆき)の作で、彼が土佐国に国司(こくし)として赴任し、任期を終えたのちの帰路、55日間のようすを記している。

 近世には、交通の発達に伴って前代と異なり、著名な松尾芭蕉(ばしょう)の『おくのほそ道』(1702刊)をはじめとして多くの紀行文がみられるようになった。橘南谿(たちばななんけい)の『東西遊記』(1795~1798)は、著者が各地を回って採集した奇聞を集めたもので、京を中心として東西に分け、『東遊記』『西遊記』と二書として出版され、広く読まれた。菅江真澄(すがえますみ)の『真澄遊覧記』(1783~1812)は各地を歴訪し、その見聞したことを記したものである。本書は珍聞をつづったのではなく、民俗学的な採訪の方法で記述されており、後世、高く評価されている。

 また紀行文のほか、人々の旅への関心に対応して、各地の宿場・名所旧跡などを紹介した名所案内書が数多く出版された。それには中川喜雲(きうん)の『京童(きょうわらべ)』(1658)、黒川道祐(どうゆう)の『雍州府志(ようしゅうふし)』(1686)などをはじめ、各地の「名所図会(ずえ)」があげられる。

[芳井敬郎]


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