女手(読み)オンナデ

デジタル大辞泉 「女手」の意味・読み・例文・類語

おんな‐で〔をんな‐〕【女手】

女の労力。また、女の働き手。「女手一つで育てた息子」「女手が足りない」⇔男手
女の書いた文字女性筆跡女文字。「女手手紙」⇔男手
《主として女が用いたところから》平仮名。⇔男手
「―を心に入れて習ひしさかりに」〈梅枝
[補説]1は、「女手一人で」とするのは誤り。

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精選版 日本国語大辞典 「女手」の意味・読み・例文・類語

おんな‐でをんな‥【女手】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 女の筆跡。女の書いた文字。⇔男手
  3. ( 女が多く使ったところから ) ひらがな。女文字。⇔男手
    1. [初出の実例]「女でに書き給へり。男の手にてこそくるしけれ」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
  4. 女のはたらき。女の労力。⇔男手
    1. [初出の実例]「宅(うち)だって、全然(まるきり)女手がなくちゃ遣切れやしない」(出典新世帯(1908)〈徳田秋声〉二五)
  5. 操り浄瑠璃人形の手の一つ。もみじ手ともいい、女の人形は老け役も娘役もすべてこの手を使う。全体にすらりと作られていて、柔らかく曲がり、優美に指をそらすことができる。塗りは白色

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改訂新版 世界大百科事典 「女手」の意味・わかりやすい解説

女手 (おんなで)

仮名書体一種。女性の用いる書体の意。男手に対するもので,《宇津保物語》に見える。平安時代漢字草書体の簡略化が進み,草(そう)の仮名が生まれる。女手はこれからさらに略体化した書体で,漢字の草書体から全く離れた流麗な線で書かれた仮名をいい,現在の平仮名および変体仮名と呼ぶ書体に当たる。当初女性の実用文字として用いられた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「女手」の意味・わかりやすい解説

女手
おんなで

女の使う文字の意味で,特にひらがなをさす。「女文字」ともいう。ただし,女性はひらがなを用いたが,ひらがなが女性の専有物とはかぎらなかった。元来,女手は,漢字 (真名〈まな〉) を男手 (おとこで) といったのに対してかな一般をさしていう言葉であったが,のち万葉がなの楷・行 (書) 体に対して,その草 (書) 体 (→草仮名〈そうがな〉) をさし,やがてひらがなに限定されるようになった。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「女手」の解説

女手
おんなで

男手(おのこで)に対する呼称で,平仮名をさす。平安時代には男は主として漢字(万葉仮名)を用い,女は平仮名を用いたことからこの名がある。平仮名は万葉仮名を草体化した草仮名をさらに簡略化したもの。女手の語は「宇津保物語」「源氏物語」などにみえる。ただしこの語は一般に定着することなく,たんに平仮名の異称として,また男手の対語として使われるにとどまった。

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世界大百科事典(旧版)内の女手の言及

【仮名】より

…それゆえ女は正式な文字としての漢字の圧迫をうけることが少なく,草書体の文字をいっそう簡略にくずして自分たちの歌や消息を記すに用いた。そのため,女子用の文字として漢字から離れた文字が成立し女手(おんなで)とよばれ,男子も女への消息に用いた。院政期に入ってからの例ではあるが,宣命においても,女に与える場合には平仮名で書いた。…

【書体】より

…平安時代に女性がそれらを草書にして用い,現在の平仮名にみるような略体ができた。これは女手または草(そう)とも呼ばれる。片仮名は漢字の音をその楷書体の一部を使って表すもので,伊の偏のイでその音を示すようなものである。…

※「女手」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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