日本大百科全書(ニッポニカ) 「道外方」の意味・わかりやすい解説
道外方
どうけがた
歌舞伎(かぶき)の役柄の一つ。数多い役柄のうちで、きわめて古く成立したものに属する。西欧の道化師のように、滑稽(こっけい)な台詞(せりふ)や物真似(ものまね)を巧みに演じて人を笑わせる役。初期歌舞伎における「猿若」の系統を引いて、野郎(やろう)歌舞伎時代に役柄としての確立をみる。元禄(げんろく)歌舞伎においては、劇構成のなかに重要な一場面を任されて、滑稽な演技を見せる場があり、司会役も兼ねる重要な役柄と認識されていた。江戸中期以降、しだいに立役(たちやく)や端役(はやく)の芸のなかに道化的な要素が吸収されていき、役柄としては衰退に向かった。天明(てんめい)・寛政(かんせい)期(1781~1801)の初世大谷徳次が道外方の名人とうたわれたのを最後に、ほとんどなくなってしまった。それ以後は、「半道(はんどう)」または「半道敵(はんどうがたき)」「チャリ敵(がたき)」などにその名残(なごり)がある。道外方を「三枚目」というのは、看板や番付に、最初に一座の花形役者、二枚目に若衆方(わかしゅがた)、三枚目に道外方を並べる習慣があったことに基づくというが、かならずしも明らかでない。和事(わごと)師を二枚目とよんだのに引かれて生まれたことばではないかと思う。
[服部幸雄]