遣す(読み)オコス

デジタル大辞泉 「遣す」の意味・読み・例文・類語

おこ・す【遣す/致す】

[動サ下二]
よこす。届けてくる。
講師、もの、酒―・せたり」〈土佐
(動詞の連用形に付いて)その動作自分の方へ及ぶことを表す。こちらへ…する。…してくる。
空合はせ(=夢判断)にあらず、いひ―・せたる僧の疑はしきなり」〈かげろふ・下〉
[動サ四]の四段活用化》1に同じ。
「極道めが―・しをらぬわい」〈滑・浮世床・初〉

まだ・す【遣す】

[動サ四]《「まい(参)る」の連用形に「いだす」の付いた「まいいだす」の音変化か》使いを差し出す。差し上げる。
「使ひを―・してあめの神にまうす」〈神代紀・上〉

おく・す【遣す/致す】

[動サ四]《「おこ(遣)す」の音変化》よこす。
「(船賃ヲ)それに―・しやらぬ人は、向かふな島へ、うちあげておきまする」〈狂言記薩摩守

こ・す【遣す】

[動サ四]つかわす。よこす。
亀屋養子に―・すからは」〈浄・冥途の飛脚

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「遣す」の意味・読み・例文・類語

おこ・す【遣・致】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 サ行下二段活用 〙 こちらに送ってくる。よこす。
    1. [初出の実例]「白珠の五百(いほ)つつどひを手にむすび於許世(オコセ)海女(あま)はむがしくもあるか」(出典:万葉集(8C後)一八・四一〇五)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 サ行四段活用 〙 ( [ 一 ]が室町頃に四段に転じたもの ) [ 一 ]に同じ。
    1. [初出の実例]「あまりのおもしろさに、斧の柄のくつるをわすれ、曾我へ人をこして候」(出典:曾我物語(南北朝頃)九)
    2. 「爰元ではしった者がござなひほどに、はやう代物をおこさせられひ」(出典:虎明本狂言・雁盗人(室町末‐近世初))

遣すの語誌

下二段活用を本来とするが、中世後期に四段活用が生じる。同じ意味を表わす語に「よこす」があり、室町時代より使用がみられる。「物類称呼‐五」に「つかはせといふ詞を 大坂にて、おこせと云〈略〉江戸にて、よこせと云」とあるように、両語には、関西方言の「おこす」と関東方言の「よこす」という地域的な対立がある。


まだ・す【遣】

  1. 〘 他動詞 サ行四段活用 〙 ( 上一段活用動詞「まいる(参)」の連用形に「いだす」のついた「参(まい)いだす」の変化した語か ) (下位者から上位者へ)使いを差し出す。使いとして差し出す。さしあげる。たてまだす。
    1. [初出の実例]「願はくは君の婦(みめ)を賜ひて後に奉遣(マタシ)(〈別訓〉たてまたし)たまへ」(出典:日本書紀(720)雄略五年四月(前田本訓))

こ・す【遣】

  1. 〘 他動詞 サ行四段活用 〙 人や物などをよこす。つかわす。
    1. [初出の実例]「筑紫より来たる人にすだれがは請ふを、いまいまとてこさねば」(出典:類従本兼澄集(1012頃))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android