日本大百科全書(ニッポニカ) 「遷界令」の意味・わかりやすい解説
遷界令
せんかいれい
中国、清(しん)朝が1661年、中国東南沿海を拠点に一大反清勢力を形成していた鄭成功(ていせいこう)およびその子孫に対抗するために実施した政策。海禁令をいっそう強化したものとして位置づけられる。適用された地域は福建、広東(カントン)を中心に江蘇(こうそ)、浙江(せっこう)、山東を加えた五省に及んだといわれる。その内容は、沿海住民を一定の距離だけ内地に強制移住させ、彼らと鄭氏との交通、貿易を遮断したものであり、それによって鄭氏の経済活動の弱体化を図ることを主目的とした。遷界令はその後数次にわたって強化され、一定の効果をあげたが、沿海住民のそれから被る経済的打撃は大きく、鄭氏の勢力が衰えた1681年からしだいに緩和され、ついに1684年に至って解除された。
[山本英史]