クロムの酸化数Ⅱ,Ⅲ,Ⅳの化合物が普通に知られているが,ほかにⅤ,Ⅵの化合物も存在する。
化学式CrO。酸化クロム(Ⅲ)Cr2O3を赤熱して水素で還元すると得られる黒色粉末。六方晶系。融点1550℃。空気中では酸化されやすく,熱するとCr2O3となる。希酸に不溶。
化学式Cr2O3。二クロム酸アンモニウム(NH4)2Cr2O7を熱分解させるか,二クロム酸塩を硫黄などと熱して還元してつくられる。
(NH4)2Cr2O7─→Cr2O3+N2+4H2O
また水酸化クロム(Ⅲ)を熱しても得られる。暗緑色六方晶系結晶。きわめて安定で,クロムグリーンとして広く顔料に用いられ,ガラス,陶器などの着色に使われる。アルミナと同形。硬さは石英より大きい。比重5.21(21℃),融点1990℃,沸点≅3000℃。水,酸,アルカリに不溶。水酸化カリウム,硝酸カリウムとともに融解するとクロム酸カリウムK2CrO4になる。
化学式CrO2。酸化クロム(Ⅵ)CrO3あるいは二塩化二酸化クロムCrCl2O2の熱分解によってつくられる黒色粉末。比重4.9。強磁性物質で,金属電導性があり,磁気テープに用いられる。
化学式Cr2O5。CrO3の熱分解によって得られる黒褐色粉末。380℃付近で分解しはじめる。
化学式CrO3。クロム酸と俗称される。二クロム酸塩(K2Cr2O7,Na2Cr2O7など)の濃水溶液に濃硫酸を加えると析出する暗赤色斜方晶系柱状晶。比重2.62,融点197℃(分解)。潮解性で水によく溶ける。水に対する溶解度166g/100g(15℃)。皮膚粘膜を侵し,きわめて毒性が強い。酸化性が強く,有機物と接触させると危険である。CrO3を熱すると200℃で分解が始まり,Cr2O3を生成するが,その過程で各種の組成のCrO3・nCr2O3が得られる。
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
クロムと酸素の化合物。クロムの酸化数によってそれぞれ異なる酸化物が知られている。
(1)酸化クロム(Ⅱ) 化学式CrO、式量68.0。クロムアマルガムを空気中に放置すると生ずる黒色粉末で、酸化クロム(Ⅲ)に酸化されやすい。
(2)酸化クロム(Ⅲ) 化学式Cr2O3、式量151.99。二クロム酸アンモニウム(重クロム酸アンモニウム)の熱分解で得られる緑色粉末で、昇華精製によって暗緑色金属光沢の結晶となる。きわめて安定で、石英より硬い。ガラスや陶器の青色顔料(クロムグリーン)に利用される。
(3)酸化クロム(Ⅳ) 化学式CrO2、式量84.01。硝酸クロム(Ⅲ)を熱分解して生ずる黒褐色粉末で、ルチル型構造をもつ強磁性体である。
(4)酸化クロム(Ⅵ) 化学式CrO3、式量99.99。無水クロム酸または単にクロム酸ともよばれることもある暗赤紫色針状結晶で、濃二クロム酸カリウム溶液に過剰の濃硫酸を加えると析出する。潮解性で、水によく溶ける強力な酸化剤である。
見かけ上はクロム(Ⅹ)の酸化物となる過酸化クロムCrO5はクロム(Ⅵ)の化合物のオキシドジペルオキシドクロム(酸化二過酸化クロム(Ⅴ))CrO(O2)2であり、有機溶媒に溶けやすい青色結晶である。酸化クロム(Ⅵ)の熱分解によっても、複雑な組成の酸化物Cr3O5、Cr5O13などが得られる。
[岩本振武]
製法は種々あるが、おもな方法には、無水クロム酸(酸化クロム(Ⅵ))を焼成する方法と、重クロム酸ナトリウム(二クロム酸ナトリウム)を硫黄(いおう)、木炭、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムなどと混合、加熱して還元する方法とがある。顔料に用いる酸化クロムは、ほとんど還元法で、その際の還元剤は塩化アンモニウムか硫酸アンモニウムのいずれかである。水、酸、アルカリに不溶のほか、ほとんどすべての化学薬品に対し安定である。耐光性、耐候性、耐熱性に優れ、実際に使用して変色するケースはほとんどない。絵の具、印刷インキ、セメントの着色に用いられる。
セラミック顔料の分野では、緑色顔料として、酸化クロムだけをそのまま使用するケースは非常に少なく、緑を出すものとしては、クロムグリーン、クロム呉須(ごす)などが、タイルの着色に用いられる。
[大塚 淳]
酸化クロム(Ⅵ)
CrO3
式量 99.99
融点 196℃
沸点 ―
比重 2.629(14℃)
結晶系 斜方(直方)
溶解度 166g/100g(水15℃)
酸化クロム(Ⅲ)
Cr2O3
式量 151.99
融点 ~2300℃
沸点 3000~4000℃
比重 5.21(21℃)
結晶系 六方
【Ⅰ】酸化クロム(Ⅱ):CrO(68.00).一酸化クロムともいう.クロムアマルガムの酸化,酸化クロム(Ⅲ)の水素還元などで得られる.黒色の粉末.水素で還元すれば金属となるが,空気中では酸化クロム(Ⅲ)に酸化されやすい.希酸には不溶.水素のガス分析,家畜の採食量検査などに用いられる.【Ⅱ】酸化クロム(Ⅲ):Cr2O3(151.99).[同義異語]三酸化二クロム.[CAS 1308-38-9]【Ⅲ】酸化クロム(Ⅳ):CrO2(83.99).二酸化クロムともいう.硝酸クロム(Ⅲ)の加熱,水酸化クロム(Ⅲ)の酸素による酸化で得られる.また,酸化クロム(Ⅵ)の熱分解の中間過程でも生成する.黒褐色,ルチル型構造の強磁性体.磁性材料として磁気テープに用いられる.[CAS 12018-01-8]【Ⅳ】酸化クロム(Ⅴ):Cr2O5(183.99).五酸化二クロムともいう.酸化クロム(Ⅵ)の熱分解で得られる.黒褐色の粉末.さらに熱すれば,容易に酸化クロム(Ⅲ)となる.【Ⅴ】酸化クロム(Ⅵ):CrO3(99.99).[同義異語]三酸化クロム【Ⅵ】このほか,酸化クロム(Ⅵ)の熱分解によって,Cr3O5,Cr3O8,Cr5O9,Cr5O12などの化合物が知られている.有機反応の酸化剤として用いられる.毒性が強い.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…クロムの酸化数II,III,IVの化合物が普通に知られているが,ほかにV,VIの化合物も存在する。
[酸化クロム(II)]
化学式CrO。酸化クロム(III)Cr2O3を赤熱して水素で還元すると得られる黒色粉末。…
…クロムの酸化数II,III,IVの化合物が普通に知られているが,ほかにV,VIの化合物も存在する。
[酸化クロム(II)]
化学式CrO。酸化クロム(III)Cr2O3を赤熱して水素で還元すると得られる黒色粉末。…
…クロムの酸化数II,III,IVの化合物が普通に知られているが,ほかにV,VIの化合物も存在する。
[酸化クロム(II)]
化学式CrO。酸化クロム(III)Cr2O3を赤熱して水素で還元すると得られる黒色粉末。…
…クロムの酸化数II,III,IVの化合物が普通に知られているが,ほかにV,VIの化合物も存在する。
[酸化クロム(II)]
化学式CrO。酸化クロム(III)Cr2O3を赤熱して水素で還元すると得られる黒色粉末。…
…クロムの酸化数II,III,IVの化合物が普通に知られているが,ほかにV,VIの化合物も存在する。
[酸化クロム(II)]
化学式CrO。酸化クロム(III)Cr2O3を赤熱して水素で還元すると得られる黒色粉末。…
※「酸化クロム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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