釈教歌(読み)シャッキョウカ

デジタル大辞泉 「釈教歌」の意味・読み・例文・類語

しゃっきょう‐か〔シヤクケウ‐〕【釈教歌】

仏教に関する和歌。また、仏教思想に基づいて詠まれた歌。勅撰集の部立てとしては、後拾遺集に釈教としてみえるのが最初で、千載集以後は1巻として独立する。

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精選版 日本国語大辞典 「釈教歌」の意味・読み・例文・類語

しゃっきょう‐かシャクケウ‥【釈教歌】

  1. 〘 名詞 〙 和歌の分類一つで、仏教に関するものをいう。経典教理をよんだもの、法事の際よまれたもの、無常観などをよんだものなどがある。たとえば、法華経二十八品歌・維摩経十喩の歌など。→釈教
    1. [初出の実例]「釈教歌 康治のころほひ、待賢門院の中納言の君法花経廿八品歌結縁のため人人によますとて」(出典:長秋詠藻(1178)下)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「釈教歌」の意味・わかりやすい解説

釈教歌
しゃっきょうか

仏教関係の和歌。仏菩薩(ぶつぼさつ)や高僧を賛嘆するなど、仏教信仰を表白した歌、経典の思想内容を表現した歌、法会(ほうえ)の際の歌、仏菩薩の示現の歌などの総称。上代の仏足石歌(ぶっそくせきか)のような歌謡もその古い例とみなしうる。『拾遺(しゅうい)和歌集』の「哀傷」の部には行基(ぎょうき)の詠と伝える「霊山(りゃうせん)の釈迦(しゃか)のみまへに契りてし真如(しんにょ)朽ちせずあひ見つるかな」など、実質的に釈教歌とみられる作が含まれている。ただし、勅撰(ちょくせん)集の部立(ぶだて)としては『後拾遺和歌集』雑(ぞう)六に「釈教」として「神祇(じんぎ)」「誹諧歌(はいかいか)」とともにみえるのが最初。『千載(せんざい)和歌集』で一巻として独立し、以後の勅撰集はすべて20巻のうちの1巻をこれにあて、中世和歌では重要な部分を占めている。選子(せんし)内親王、寂然(じゃくねん)、慈円(じえん)、明恵(みょうえ)などは釈教歌の代表的作者である。叙情的な傾向の著しい和歌では、たとえば法華経(ほけきょう)二十八品(ほん)和歌や維摩十喩(ゆいまじゅうゆ)の歌など、思想性に富む作品が多い分野であるといえる。表現に漢語などの仏教用語が取り込まれることも多く、和歌的表現という点ではなだらかでない作品も少なくない。

久保田淳

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世界大百科事典(旧版)内の釈教歌の言及

【選子内親王】より

…《拾遺和歌集》以後の勅撰集に37首入集し,家集《大斎院前の御集》《大斎院御集》《発心和歌集》を残す。《大斎院前の御集》《大斎院御集》は,選子個人の家集ではなく,定子や彰子の後宮を《枕草子》や《紫式部日記》が記録するように,斎院サロンのありさまを伝え,《発心和歌集》は,斎院でありながら仏教に帰依し,《法華経》の法文を題にして詠んだ釈教歌55首を収めているが,釈教歌としても初期の作品に属し,家集は,みな文学史上特異な作品として注目されている。【上野 理】。…

※「釈教歌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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