幕末の合巻。万亭応賀(まんていおうが)作。一陽斎豊国,2世歌川国貞,猩々狂斎画。1845-71年(弘化2-明治4)刊。58編。仮名草子の《釈迦八相物語》,近松門左衛門の《釈迦如来誕生会》などに拠って,釈迦の一代記を合巻化したもの。釈迦の誕生から19歳のときの出家,12年の修行を積んで正覚を得るまでが前半で,後半は釈迦が外道の迫害をしりぞけて,衆生を教化する過程を描く。釈迦と提婆達多をめぐる善悪の対立に筋の興味がおかれているが,摩耶夫人,耶輸陀羅女(やすたらによ)などの女性を活躍させて,彩りをそえている。挿絵が《田舎源氏》そっくりの御殿風に描かれていた効果もあわせて,《児雷也豪傑譚》《白縫譚(しらぬいものがたり)》などとともに幕末の読者の人気を博した。
執筆者:前田 愛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
…劇化のはじまりは,山東京伝の読本《復讐奇談 安積沼(あさかのぬま)》(1803)と合巻の《安積沼後日仇討》(1807)に取材した南北の《彩入御伽艸(いろえいりおとぎぞうし)》(1808年閏6月江戸市村座)であった。以下,著名な草双紙物をあげると,38年(天保9)市村座の《内裡模様源氏紫(ごしよもようげんじのえどぞめ)》と51年(嘉永4)江戸中村座の《東山桜荘子》は,柳亭種彦作《偐紫(にせむらさき)田舎源氏》(1829‐42),60年(万延1)中村座《金瓶梅曾我松賜(たまもの)》は,曲亭馬琴作《新編金瓶梅》(1831‐47),52年(嘉永5)江戸河原崎座の《児雷也豪傑譚話(ものがたり)》は,美図垣笑顔(みずがきえがお)作《児雷也豪傑譚》(1839‐47),53年江戸河原崎座の《しらぬひ譚》は,種員・種彦・種清合作の《白縫譚》(1849‐85),54年(安政1)中村座の《花見台(はなみどう)大和文庫》は,万亭応賀作《釈迦八相倭文庫(しやかはつそうやまとぶんこ)》(1845‐71)の,それぞれ脚色物であった。明治中期に草双紙が終息するとともに終わった。…
※「釈迦八相倭文庫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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