白縫譚(読み)シラヌイモノガタリ

デジタル大辞泉 「白縫譚」の意味・読み・例文・類語

しらぬいものがたり〔しらぬひものがたり〕【白縫譚/白縫物語】

合巻。90編。柳下亭種員りゅうかていたねかず・2世柳亭種彦柳水亭種清の合作。歌川豊国ら画。嘉永2~明治18年(1849~85)刊。大友宗麟の娘の若菜姫(白縫)の復讐ふくしゅう物語を中心とした長編
(しらぬひ譚)歌舞伎狂言時代物。8幕。河竹黙阿弥作。嘉永6年(1853)江戸河原崎座初演。の第14編までを脚色したもの。

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精選版 日本国語大辞典 「白縫譚」の意味・読み・例文・類語

しらぬいものがたりしらぬひものがたり【白縫譚・白縫物語】

  1. [ 一 ] 合巻。全九〇編。柳下亭種員(たねかず)、二世種彦、柳水亭種清の合作。絵は歌川豊国、歌川国貞など。初編嘉永二年(一八四九)刊、明治一八年(一八八五)完結。大友宗麟の娘若菜姫(白縫)が、大友家を滅ぼした菊池氏に対して復讐しようとする話を骨子とした、合巻中の最大長編。四〇年間にわたって書かれ、作者も途中で代わっているため内容に矛盾不統一が見られる。七二編以下は活字版。
  2. [ 二 ] ( しらぬひ譚 ) 歌舞伎脚本。時代物。八幕。河竹黙阿彌作。嘉永六年(一八五三)江戸河原崎座初演。柳下亭種員の合巻「白縫譚」の一四編までを脚色したもの。筑紫の菊池家の忠臣鳥山豊後之助の一子犬千代は、愚かであったが、乳母秋篠が自害してその生血を飲ませたので、たちまち武勇を現わし、秋作照忠となり活躍する件(くだり)だけがよく上演される。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「白縫譚」の意味・わかりやすい解説

白縫譚
しらぬいものがたり

合巻(ごうかん)。90編。1849年(嘉永2)初編刊、85年(明治18)完結。初編から大団円の90編まで「続帝国文庫 第28、29編」(1900)に翻刻。柳亭種員(たねかず)、2世柳亭種彦(笠亭仙果)、柳水亭種清作。3世歌川豊国(とよくに)、2世歌川国貞(くにさだ)ら画。合巻中の最長編小説で、舞台を九州にとり、有明(ありあけ)海に妖(あや)しく燃える不知火(しらぬい)に発想の端を得ていることから、一名『不知火物語』ともいう。錦(にしき)が嶽(たけ)の妖女(ようじょ)から蜘蛛(くも)の妖術を授かった大友家の息女若菜姫は、男装して白縫大尽(だいじん)と名のり、志を同じくする天草四郎と仇敵(きゅうてき)菊地をうかがう。初め菊地の忠臣鳥山豊後之助(ぶんごのすけ)の一子秋作と妖術の限りを尽くして闘った姫だが、やがて豊後之助と力をあわせて九州一円の海賊を平定し、姫と豊後之助は天帝に召されて昇天する。天草の乱をはじめ、黒田騒動や、近松半二ら合作の浄瑠璃(じょうるり)『菊地大友姻袖鏡(きくちおおともこんれいそでかがみ)』(1765・大坂竹本座初演)を構想に取り入れ、美童、勇士のめまぐるしい活躍に艶美なまでの幻妖、怪奇性を自在に織り込み、一大ロマンの世界を展開させている。1853年に初編から14編まで河竹黙阿弥(もくあみ)によって劇化され、江戸・河原崎座で上演、好評を博している。

[棚橋正博]

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改訂新版 世界大百科事典 「白縫譚」の意味・わかりやすい解説

白縫譚 (しらぬいものがたり)

合巻。柳下亭種員(たねかず)・2世柳亭種彦・柳水亭種清の嗣編合著。3世歌川豊国・2世国貞・芳幾・守川周重・楊洲周延画。90編。初編~71編は1849-85年(嘉永2-明治18)刊,72編のみ後人補,73-90編は1881年ころから83年に成った草稿があったらしく,続帝国文庫《白縫譚》下巻に翻刻。書名は《不知火物語》《白縫物語》とも記す。妖術使いの美姫が筑紫を舞台に活躍し黒田騒動や天草の乱の趣を示す合巻中の最大長編。大友家の遺女若菜姫が蜘蛛(くも)の妖術で仇敵菊地家をねらい,同家の忠臣勇士たちがこれに対抗,中国海賊の遺児の陰謀もからみ,島山の寨(とりで)の攻防に発展,賊徒平定に終わる。猟奇色濃く,筋は錯雑しすぎるが,末期合巻の特色を発揮した作品。劇化されたものに《しらぬひ譚》がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「白縫譚」の意味・わかりやすい解説

白縫譚
しらぬいものがたり

合巻 (ごうかん) 。柳下亭種員 (たねかず) ,2世柳亭種彦,柳水亭種清の合作。3世歌川豊国,2世歌川国貞画。 90編。嘉永2 (1849) ~3年刊。菊池家に滅ぼされた大友家の息女若菜姫,漢土の海賊の遺児七草四郎に対し,菊池家の忠臣鳥山豊後之助の子秋作が戦う,島原の乱などに取材した物語。『不知火物語』とも書く。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「白縫譚」の解説

白縫譚
しらぬいものがたり

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
河竹新七(2代) ほか
初演
嘉永6.2(江戸・河原崎座)

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世界大百科事典(旧版)内の白縫譚の言及

【草双紙物】より

…劇化のはじまりは,山東京伝の読本《復讐奇談 安積沼(あさかのぬま)》(1803)と合巻の《安積沼後日仇討》(1807)に取材した南北の《彩入御伽艸(いろえいりおとぎぞうし)》(1808年閏6月江戸市村座)であった。以下,著名な草双紙物をあげると,38年(天保9)市村座の《内裡模様源氏紫(ごしよもようげんじのえどぞめ)》と51年(嘉永4)江戸中村座の《東山桜荘子》は,柳亭種彦作《偐紫(にせむらさき)田舎源氏》(1829‐42),60年(万延1)中村座《金瓶梅曾我松賜(たまもの)》は,曲亭馬琴作《新編金瓶梅》(1831‐47),52年(嘉永5)江戸河原崎座の《児雷也豪傑譚話(ものがたり)》は,美図垣笑顔(みずがきえがお)作《児雷也豪傑譚》(1839‐47),53年江戸河原崎座の《しらぬひ譚》は,種員・種彦・種清合作の《白縫譚》(1849‐85),54年(安政1)中村座の《花見台(はなみどう)大和文庫》は,万亭応賀作《釈迦八相倭文庫(しやかはつそうやまとぶんこ)》(1845‐71)の,それぞれ脚色物であった。明治中期に草双紙が終息するとともに終わった。…

※「白縫譚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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