野中の清水(読み)ノナカノシミズ

デジタル大辞泉 「野中の清水」の意味・読み・例文・類語

のなか‐の‐しみず〔‐しみづ〕【野中の清水】

野中にわき出る清水。特に、播磨はりま印南野いなみのにあったという清水。冷たくてよい水であったが、のちにぬるくなってしまったという。[歌枕
「いにしへの―ぬるけれどもとの心をしる人ぞくむ」〈古今・雑上〉
1古今集の歌から》昔親しい仲であったが今は疎遠になってしまった人、またはその仲をたとえていう語。
「いにしへの―見るからにさしぐむものは涙なりけり」〈後撰・恋四〉

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精選版 日本国語大辞典 「野中の清水」の意味・読み・例文・類語

のなか【野中】 の 清水(しみず)

① 野中にわく清水。特に、播磨国印南野(いなみの)(=兵庫県南部、加古川・明石川の流域一帯)にあったという名水。昔は冷たいよい水であったが、のちにぬるくなったという。
※古今(905‐914)雑上・八八七「いにしへの野中のし水ぬるけれどもとの心をしる人ぞくむ〈よみ人しらず〉」
② (①の古今集歌から)
(イ) 今は別れてしまった、かつての恋人やその恋、またはその人との仲をたとえていう。野中の水。
※後撰(951‐953頃)恋四・八一三「いにしへののなかのしみづみるからにさしくむものは涙なりけり〈よみ人しらず〉」
(ロ) かつての親しい知人、旧友、旧情などをたとえていう。
俳諧鶉衣(1727‐79)後「これは久しき友なればと、おとづれかはすほどに、野中の清水にことよせて、そろそろ昔をとりかへし」
(ハ) 特に中世以降、一人心を澄ますことをたとえていう。
御伽草子横笛草紙(室町末)「野中(ノナカ)の清水(シミヅ)とは、人にとはれず、ひとりすむ事也」

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日本歴史地名大系 「野中の清水」の解説

野中の清水
のなかのしみず

[現在地名]西区岩岡町野中

野中にあった名水。現状は史跡公園となっている。元禄三年(一六九〇)明石藩は清水を浚え、岸を築いて制札を立てた(明石名勝古事談)藩主はよく茶事に用いたと伝える。元禄年間には酒造家大和屋が酒造用にし、正徳二年(一七一二)には「野中清水醸酒記」が記されたという(紹述先生文集)

〔歌枕〕

「古今集」仮名序に「野中の水をくみ」とみえ、同書に「いにしへの野中の清水ぬるけれどもとの心を知る人ぞ汲む」(読人知らず)の歌を収める。「和歌初学抄」「八雲御抄」ともに播磨とする。西行も円教えんぎよう(現姫路市)参詣の途中当地を通り、後年再び立寄った際「むかし見し野中の清水かはらねばわが影をもや思出づらん」(山家集)と詠んでいる。

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事典・日本の観光資源 「野中の清水」の解説

野中の清水

(和歌山県田辺市)
名水百選指定の観光名所

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デジタル大辞泉プラス 「野中の清水」の解説

野中の清水

和歌山県田辺市の熊野古道沿いにある湧水。1985年、環境庁により名水百選のひとつに選定された。

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