北海道東部で根室(ねむろ)海峡に突出する砂嘴(さし)。日本の代表的な分岐砂嘴で、西岸の野付湾に向かって多くの分枝を出している。基部の標津町(しべつちょう)ポンノウシから南東方向に延び先端の野付岬まで約28キロメートル、標高6メートル以下、幅はもっとも狭い所で130メートル。砂嘴の大部分は草原と湿原で占められるが、ミズナラやダケカンバの疎林もあり、先端部に近い分岐砂嘴にトドマツが立ち枯れた風景が奇観を呈するトドワラ(トド原)がある。基部から竜神(りゅうじん)崎までは自動車道路があるが、観光シーズンの夏期には不定期航路が尾岱沼(おだいとう)集落とトドワラを結ぶ。野付風蓮(ふうれん)道立自然公園の一部。なお、野付半島は野付湾とともに2005年(平成17)に、ラムサール条約登録湿地となった。
[進藤賢一]
北海道東部,根室海峡中部の野付水道に突出する砂嘴(さし)。先端が複雑に分かれた典型的な分岐砂嘴で,基部から先端まで約28km,最狭部の幅130m,標高6m以下。野付半島ともいい,先端部が狭義の野付崎である。標津(しべつ)市街地の南方から南東方向に延び,灯台のある竜神崎から西方向に屈曲して尾岱沼(おだいとう)(野付湾)を抱き,湾内に12ヵ所の分枝を突き出している。湾側にミズナラ,ダケカンバの森,竜神崎付近にセンダイハギ,ワタスゲの群落がみられるが,大半は草原か湿原で,ところどころにエゾマツやトドマツの立枯れがある荒涼たる景観を呈する。砂嘴上で放牧,尾岱沼でエビ漁,水道側で9~11月にサケ定置網漁が行われるが,定住者はない。
執筆者:奥平 忠志
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