長野県北東部,下高井郡の村。人口3853(2010)。千曲川下流南岸,毛無山(1650m)の北麓に位置し,その東側を奥志賀林道が縦断する。中心の野沢には行基によって発見されたと伝える野沢温泉(単純硫化水素泉,42~92℃)があり,湯治場として発達した。集落内には,大湯,熊の手洗湯,赤湯など湯仲間によって管理された13の共同浴場があり,麻釜(おがま)と呼ばれる湯畑もある。また,近代的な入浴法の指導などを行うクアハウスもある。積雪3mにも達する豪雪地帯で,日本にスキーが伝えられてまもない明治末期に野沢でスキーが行われた。第2次大戦前にも各種のスキー大会が開かれており,1950年にはスキーリフトがつくられるなど,スキー場の歴史は古く,日本スキー博物館もある。53年には村名を豊郷(とよさと)村から野沢温泉村に改め,スキーと温泉の観光立村の性格が強い。日本スキー博物館などの観光施設の整備等もすすめられ,民宿も多い。野沢菜漬で知られるノザワナの原産地で,健命寺には寺種としてその原種が栽培されている。周辺の集落では米作のほか,エノキタケ,トマト,キュウリなども生産される。また,農閑期の副業として始められ,かつては村の主産業でもあったアケビ細工は,みやげ品の鳩車に継承されている。
執筆者:柳町 晴美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
長野県北東部、下高井郡の村。千曲(ちくま)川下流右岸にある。1953年(昭和28)豊郷(とよさと)村が野沢温泉村と改称。1956年市川村を合併。新潟県境に近い山麓(さんろく)傾斜地にあり、豪雪地で農業も米作のほかにみるべきものはないが、ノザワナの原産地として知られる。古くからの野沢温泉を中心に、毛無(けなし)山斜面のスキー場開発など観光に重点を置いている。1998年(平成10)の長野冬季オリンピックでは会場の一つ。年間観光客の70%は冬季に集中する。野沢の火祭は有名。面積57.96平方キロメートル、人口3279(2020)。
[小林寛義]
長野県北東部の野沢温泉村にある温泉。毛無山(けなしやま)北麓に位置する。江戸時代の開湯で、現在も湯治場的な素朴な雰囲気をもち、旅館のほか民宿も多い。集落の中央にある麻釜の湯(おがまのゆ)は約90℃の熱湯で、山菜やアケビ細工の原料、卵をゆがくのに利用される。泉質は硫黄(いおう)泉。名産に漬物の野沢菜、鳩車(はとぐるま)などのアケビ細工がある。JR飯山(いいやま)線戸狩(とがり)野沢温泉駅からバスで20分。
[小林寛義]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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