鉄炮記(読み)てっぽうき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉄炮記」の意味・わかりやすい解説

鉄炮記
てっぽうき

1543年(天文12)の鉄炮伝来について記した一文。1606年(慶長11)儒僧で薩摩国大龍寺に住していた南浦文之(なんぽぶんし)が、種子島久時(たねがしまひさとき)の依頼により撰文。1543年種子島に漂着したヨーロッパ人から、種子島の領主種子島時尭(ときたか)が鉄炮2挺を買い求め、火薬の調合法を家臣に学ばせたこと、うち1挺を紀州根来(ねごろ)寺の杉坊(すぎのぼう)に譲ったこと、翌年別のヨーロッパ人から鉄炮の鋳造法も学ばせたことなどを記す。鉄炮の普及について時尭の功績をたたえた一文で、潤色の可能性はあるが、種子島家からの史料等によっているとみられ、記述はほぼ正確と考えられる。文之の詩文集『南浦文集』に収載。『薩藩叢書』に所収

熱田 公]

『『新薩藩叢書4』(1971・歴史図書社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「鉄炮記」の意味・わかりやすい解説

鉄炮記 (てっぽうき)

1543年(天文12)日本への鉄砲伝来来歴を伝える基本文献。1606年(慶長11)薩摩の学僧文之玄昌が種子島久時の求めに応じ,種子島家譜その他の資料により久時の父である時尭(ときたか)の功績をたたえるため編纂した。文之の詩文集《南浦文集》に収載。文集は,1625年(寛永2)門人により版行され,《鉄炮記》はその上巻に所収。自筆本は鹿児島大竜寺に伝えられたが,明治初め島津家のものとなった。《薩藩叢書》第2編に所収されている。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「鉄炮記」の解説

鉄炮記
てっぽうき

1543年(天文12)に鉄砲が伝来した事情を記した記録。1巻。1606年(慶長11)文之玄昌(ぶんしげんしょう)が種子島(たねがしま)久時に委嘱されて撰述。種子島に来航したポルトガル人から鉄砲を入手した島主種子島時尭(ときたか)が家臣に火薬の製法を学ばせ,鉄砲を模造させて国産化に成功,これにより鉄砲が日本各地に普及したとし,時尭の功績をたたえる。難点もあるが,鉄砲伝来に関する信憑性の高い史料とされる。「南浦(なんぽ)文集」(「新薩藩叢書」)所収。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鉄炮記」の意味・わかりやすい解説

鉄炮記
てっぽうき

南浦文之(玄昌。→文之)著。慶長11(1606)年成立。種子島久時の依頼で,その父種子島時堯が,初めて鉄炮を受け入れた事跡を記念するために記述された。記述は正確,詳細で資料的に価値が高い。『南浦文集』に所収。(→種子島銃鉄砲伝来

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