銭謙益(読み)センケンエキ(その他表記)Qián Qiān yì

デジタル大辞泉 「銭謙益」の意味・読み・例文・類語

せん‐けんえき【銭謙益】

[1582~1664]中国、明末清初の学者詩人常熟江蘇省)の人。あざな受之じゅし。号は牧斎。明・清2朝に仕えたことで批判された。明代の古文辞派などを批判し、詩のもつ気高い趣を重んじた。また詩賦に長じ、清代詩壇の基を築いた。著「初学集」「有学集」など。

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精選版 日本国語大辞典 「銭謙益」の意味・読み・例文・類語

せん‐けんえき【銭謙益】

  1. 中国、明末・清初の政治家、文人。字(あざな)は受之。号は牧斎。江蘇常熟の人。明の東林党一員で、のち清に仕え礼部右侍郎となる。諸学に通じたが、特に詩賦にすぐれ、呉偉業龔鼎孳(きょうていじ)とともに江左の三家と呼ばれた。著に「初学集」「有学集」など。(一五八二‐一六六四

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改訂新版 世界大百科事典 「銭謙益」の意味・わかりやすい解説

銭謙益 (せんけんえき)
Qián Qiān yì
生没年:1582-1664

中国,明末・清初の学者,詩人。字は受之,号は牧斎。江蘇省常熟県の人。明の万暦38年(1610)の進士。官は礼部侍郎に進んだが,東林党に属し,しかも政府に批判的だったために不遇であった。明の滅亡後,一時南京の福王を擁立したが,清軍に降伏して,これに仕えた。そのため,彼の死後乾隆帝は2朝に仕えた不忠の臣として非難し,その著書をすべて禁止した。しかし,詩人としては呉偉業と並んで称せられ,また当時の詩壇の主流であった古文辞派を批判し,形式よりも内容を尊ぶべきだと主張した。学者としては漢唐訓詁の学を称揚して,後の考証学の先声となった。そのほか,蔵書家としては《絳雲楼(こううんろう)書目》を残し,また晩年仏教にも深い関心を寄せて仏典注釈を著している。著書に,明代の詩の選集列朝詩集》,彼自身の詩文集として《初学集》《有学集》がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「銭謙益」の意味・わかりやすい解説

銭謙益
せんけんえき
(1582―1664)

中国、明(みん)末清(しん)初の学者、詩人。字(あざな)は受之(じゅし)、号は牧斎(ぼくさい)。江蘇(こうそ)省常熟(じょうじゅく)の出身。1610年(万暦38)の進士。官は礼部尚書に至り、正義派の政治結社、東林党の指導者として重きをなした。明の滅亡の直後、南京(ナンキン)に福王(ふくおう)を擁立したが、清軍が迫るとたちまち降伏し、清朝の礼部右侍郎に任ぜられた。このため乾隆(けんりゅう)帝は、名節尊重とその影響力の払拭(ふっしょく)をねらい、銭の著書をすべて禁書にしている。銭は明末清初の文壇の重鎮であり、深い学識を背景に重量感のある詩文を書き、清初の詩人としては呉偉業(ごいぎょう)と双璧(そうへき)と称された。明詩の選集に『列朝詩集』81巻がある。自身の詩文集には『初学集』110巻、『有学集』50巻がある。

[佐藤一郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「銭謙益」の意味・わかりやすい解説

銭謙益
せんけんえき
Qian Qian-yi

[生]万暦10(1582)
[没]康煕3(1664)
中国,明末清初の文学者。江蘇省常熟の人。字,受之。号,牧斎。万暦 38 (1610) 年進士に及第,翰林院編修となり,のち札部右侍郎に進んだが,私行上の問題を告発され免官になった。明の滅亡に際し,南京の福王のもとで礼部侍郎となったが,清軍が迫ると進んで降伏し清朝に仕えた。やがて病を理由に郷里へ帰りそこで没した。文学は形式より内容を尊ぶべきであると主張して,帰有光の散文を推称し,衰退しつつあった擬古派にとどめを刺した。詩は呉偉業と並称され,また明詩のアンソロジー『列朝詩集』 81巻の編もあり,当時の文壇の指導的存在であった。その変節を乾隆帝が激しく非難したことから,一切の著作を禁絶されたが,明代の作を集めた『初学集』 110巻,清代以後の作を集めた『有学集』 50巻が残っている。

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世界大百科事典(旧版)内の銭謙益の言及

【列朝詩集】より

…中国,清初の銭謙益の編纂した明詩の選集。1652年(順治9)序刊。…

※「銭謙益」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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