列朝詩集(読み)れっちょうししゅう(その他表記)Liè cháo shī jí

改訂新版 世界大百科事典 「列朝詩集」の意味・わかりやすい解説

列朝詩集 (れっちょうししゅう)
Liè cháo shī jí

中国,清初の銭謙益編纂した明詩の選集。1652年(順治9)序刊。金の元好問の《中州集》に倣って,詩による明の歴史を作るのが,その編纂の目的であった。〈乾〉(2巻,皇帝皇族),〈甲前〉(11巻,太祖の挙兵から建国までの16年間),〈甲〉(22巻,洪武・建文の35年間),〈乙〉(8巻,永楽から天順までの62年間),〈丙〉(16巻,成化から正徳までの57年間),〈丁〉(16巻,嘉靖から崇禎までの123年間),〈閏〉(6巻,僧侶,道士,女子,宦官(かんがん),外国人など)の各集に分けて詩人別に詩を選集し,各詩人の詩の冒頭にその小伝をつけている。それだけを抜きだした〈列朝詩集小伝〉が流布している。前後七子の〈模擬〉,公安派の末流の〈鄙俚(ひり)〉,竟陵派(きようりようは)の〈幽独〉を批判し,〈有物〉(〈有本〉〈有詩〉とも)と評しうる,真の性情のあらわれた文学に価値を認め,帰有光茅坤袁宏道,および〈嘉定の四先生〉(程嘉燧,唐時升,婁堅,李流芳)の文学を高く評価している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「列朝詩集」の意味・わかりやすい解説

列朝詩集
れっちょうししゅう

中国、明(みん)代の詩の総集。乾(けん)集2巻、甲集前編11巻、甲集22巻、乙集8巻、丙集16巻、丁集16巻、閏(じゅん)集6巻、計81巻。清(しん)の銭謙益(せんけんえき)の編。1652年刊。明の詩人約2000人の作品を選録し、乾集に皇帝、王族を載せ、甲集より丁集までに一般詩人を時代順に配列し、閏集に僧侶(そうりょ)・女流・外国人(日本人8人を含む)などを配する。詩人ごとに付された略伝は、編者詩評に独創的見解がみられるところから重視され、のち族孫にあたる陸燦(りくさん)によって単行本にも編まれた。銭謙益の編著書は彼の死後、明清二朝に仕えたかどですべて発禁処分を受けたため、中国では本書の流伝もまれである。

和泉 新]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「列朝詩集」の意味・わかりやすい解説

列朝詩集
れっちょうししゅう
Lie-chao shi-ji

中国,明詩の選集。銭謙益の編。 81巻。順治9 (1652) 年成立。金の『中州集』にならって,皇帝から僧侶,女性,外国人にいたる約 2000人の明代の人物の詩を選んだもの。作者ごとに小伝が付され,それだけを抜き出して『列朝詩集小伝』の名で刊行され,貴重な伝記資料となっている。なお,編者の銭謙益が清朝を誹謗して朝廷から排斥されたため,本書も 18世紀後半に禁書となり,流布することが少なかった。

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世界大百科事典(旧版)内の列朝詩集の言及

【銭謙益】より

…そのほか,蔵書家としては《絳雲楼(こううんろう)書目》を残し,また晩年,仏教にも深い関心を寄せて仏典の注釈を著している。著書に,明代の詩の選集《列朝詩集》,彼自身の詩文集として《初学集》《有学集》がある。【坂出 祥伸】。…

【中州集】より

…帝王以下,金一代の詩人249人の作品を,それぞれに小伝をつけて採録したもの。銭謙益による明代の詩の集録である《列朝詩集》は,元好問の《中州集》にあやかるものである。天興2年のとき,元好問は44歳であったが,以後補訂を加え続け,元好問60歳のときに初めて板刻された。…

※「列朝詩集」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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